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タイ人への日本語教育

外国人を採用するときには、日本語力が大きな課題になります。親日国として知られるタイですが、日本語力がどの程度かはあまり知られていません。ここでは、タイ人の日本語力やタイにおける日本語教育事情などを紹介しています。

タイ人の日本語力とは

タイは、東南アジアの中で日本語教育が盛んな国のひとつです。タイの日本語学習者のうち約8割が中等教育機関で学んでいます。後期中等教育の第二外国語のひとつとして日本語が加えられたことや2001年の基礎教育カリキュラム改訂によって前期中等教育でも日本語講座が可能になったことなどが影響しています。日本語を活かせる職場が国内に豊富なこともあり、日本語を学ぶモチベーションが高い環境です。

参照元:【pdf】JAPAN FOUNDATION 国際交流基金/東南アジア https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2021/s_east_asia.pdf

タイの日本語教育事情

日本語教育の歴史

タイにおける日本語教育の歴史は、1947年ボピットピムック後期中等教育日本語講座開設にスタートします。1964年にタイ国元日本留学生協会附属日本語学校日本語講座が開設され、1965年にタマサート大学日本語講座、1966年にチュラーロンコーン大学日本語講座、1969年に在タイ国日本国大使館広報文化センター日本語学校日本語講座と、日本語講座が開講されていきます。1980年代には地域の大学にも日本語講座が普及していき、2000年代にはタイ東北部のコンケン大学でも日本語教育プログラムがスタートしました。日本語能力検定がバンコクとチェンマイ、ソンクラー、コンケン、ウボンラチャタニーで行われています。2017年度からオンラインでの申し込みとなりました。

日本語を学習するきっかけ

日本語を活かした就職先が国内に豊富にあることから、日本語を学び始める人が少なくありません。2020年JETRO調査では、タイに進出している日系企業は5,856社にのぼっています。また、アニメやマンガ、歌などの日本文化の流入がきっかけになっているケースも少なくありません。

学校教育での日本語

高等教育段階での日本語教育の歴史が古く、日本語や日本語教育に関する研究やセミナー、勉強会など様々な取り組みが行われています。優秀な研究者を中心に、日本で出版された教材や参考図書の翻訳なども行われています。

1981年に後期中等教育の第二外国語に日本語が加えられ、2001年に基礎教育カリキュラムの改定で前期中等教育でも日本語の開講が可能になりました。2010年からは中等教育機関を対象に、新方針の元、理数系を含めたすべてのクラスで第二外国語の履修が可能になったことも日本語学習者の増加を後押ししています。

タイ教育省は、2013年から2018年までの5年間で日本語教員200名を特別枠で公務員として採用しました。2022年度は、日本語を教える国立中等教育機関が431あります。また、2018年度日本語教育機関調査では、国立・私立大学を合わせて80以上の大学で日本語教育が行われています。

初等教育では日本語教育を行っている機関は少なく、外国語プログラムを持つ学校で小学校4年制から第二外国語の選択必修科目として教えている程度にとどまっています。

学校教育以外での日本語

オンライン授業を中心に、民間教育機関が日本語教育を提供しています。2021年度の教育機関調査値で2018年調査より学習者が約55%減少しましたが、学習の場がオンラインコースや各種メディアを利用する場に移行していることが一因と考えられています。

参照元:【pdf】JAPAN FOUNDATION 国際交流基金/タイ(2022年度) https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2022/thailand.html

タイ人の文化について

タイはかなりの親日国家です。日本食や日本の自然が好きな人やアニメ・マンガといった日本のカルチャーに興味がある人が多いです。親日感情から、日本語への興味が高く、日本語教育も充実しています。しかし、タイでは学力の低下が課題となっており、日本語の学習レベルも個人差が大きいです。

タイには日系企業がたくさんあるため、国内の日系企業や日本語が活かせる企業に就職する傾向が強く、日本に行って就職するという考えが普及しているわけではありません。しかし技能実習生として来日したり、日本に留学後そのまま日本の企業で就職する人もいます。

タイは95%が仏教徒です。日本の仏教とは少し異なり、修行や僧侶へのお布施などが大切な行いと考えられています。日頃から徳を積むことを重視しているため、親切で温厚な人が多いです。上司が部下を人前で叱責するといった行いは、タイ人の信用を失うことに注意しましょう。

タイ人の穏やかな気質にあわせた日本語教育を提供しよう

親日国家であるタイでは、日本語教育を行っている教育機関が充実しています。第二外国語に力を入れていることや日系企業の進出が多いことから、日本語を学習する人は安定して多い環境です。一方、タイ国内での生活がしやすいため、海外で働く人は多くありません。穏やかな性格の人が多いため、タイ人を採用する際は、争いごとや叱責などを避けるよう注意しましょう。