外国人介護士の採用についてくる課題が、帰国の問題です。帰国には、本人の意思によるものとそうでないものがあります。せっかく育った戦力に定着してもらうためにも、帰国の理由を理解して、対策しましょう。ここでは、外国人介護士が帰国するケースと事業者ができる対策を紹介します。
熱意を持って介護の仕事に取り組み、着実にスキルを高めていく外国人介護士も多くいます。人手不足の介護業界では、そのような外国人介護士は貴重な戦力です。しかしそうした人材は、日本以外の国でも高い価値があります。
外国人介護士にとっても、海外に移住した富裕層の日本人などのハイクラスな利用者を相手にする方がメリットが大きいこともあり得るでしょう。よりよい待遇やキャリアアップのために帰国する可能性があります。
また、日本での生活に馴染めない、職場での信頼関係が構築できていないなどの問題があると、住み慣れた土地で働きたいという思いから帰国に至るケースもあります。
突如帰国してしまうといった問題を避けるためには、日本の介護業界で働き続けたいと思われる定着支援が欠かせません。信頼関係の構築やコミュニケーションを取ることが重要です。
外国人介護士は、在留資格ごとに日本に滞在できる期限が設けられています。EPAと在留資格「介護」は日本での永続的な就労が認められていますが、技能実習と特定技能は最長で5年です。
参照元HP:外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/overview/)
介護福祉士国家資格に合格することで在留資格「介護」に変更できますが、国家試験に合格できずに期限に達してしまった場合は、本人の意志とは関係なく帰国することになります。
また、特定技能ビザは2019年に開始した制度です。制度発足以前から日本で就労している外国人介護士は、豊富な経験を持っていながら、特定技能の要件である日本語能力試験に合格できず帰国を余儀なくされるといったケースも少なくありません。
この場合、特定技能ビザが取得できなかった外国人をフォローする制度がないため、事業所は採用した貴重な戦力を失うことになります。
本人の意思ではなく滞在資格の問題での帰国対策には、特定技能ビザなど在留資格を取得するサポートが効果的です。特に2019年以前に来日していた外国人介護士の場合は、日本語能力試験などで不合格で在留資格を失い、帰国を迫られるケースがあります。本人が日本での活躍を希望しているのに帰国せざるを得ない事態を回避するためには、N4以上の日本語能力試験対策として集中的な日本語教育を提供し、介護技能評価試験に向けた専門的な研修や模擬試験を実施しましょう。また、国家資格である在留資格「介護」の取得支援を行うことで、より長期的な活躍が見込めます。
資格取得支援はもちろん、リーダー職などのキャリアアップ支援を行うことで、日本で活躍するモチベーションにつながります。段階的な昇進制度の導入や、リーダーシップ研修などを実施し、将来的な管理職への道を開くことが大切です。また、専門的なスキルアップ研修や資格取得支援を通じて、介護の質の向上と個人の成長を促進します。日本語能力向上のための継続的な教育プログラムを提供し、コミュニケーション能力の強化を図ることも外せない支援です。外国人介護士の職場定着率が向上し、長期的なキャリア展望が開けることで、帰国を選択する可能性が低下します。
定期的なカウンセリングやメンタルヘルスチェックを実施し、ストレスや不安を早期に発見・対処しましょう。文化や風習の違いを理解し尊重する環境づくりや、相談しやすい雰囲気をつくることが重要です。職場の交流会や地域イベントへの参加を促し、日本人との交流機会を増やすことで、生活の安定と勤労意欲の向上につながります。外国人介護士の精神的な安定を図ることで、帰国を選択する可能性を低減させることができます。
家族の日本への呼び寄せや一時帰国の支援も有効です。ビザ取得手続きの援助や、家族の住居探しのサポート、子どもの学校入学手続きの支援などが挙げられます。また、家族向けの日本語教室や文化適応プログラムの提供、地域コミュニティとの交流イベントの開催もおすすめです。定期的な一時帰国のための休暇制度や渡航費補助を設けることで、家族との絆を維持しやすくなります。
労働環境が悪ければ帰国を考えることは当然です。環境改善は最初に取り組むべき課題ともいえます。能力に見合った適正な給与の支払い、適切な労働時間の設定、十分な休憩時間の確保、有給休暇の取得しやすい環境づくりが重要です。また、残業ニーズにも柔軟に対応し、個々の事情に応じた働き方を提供することも意識しましょう。研修制度を整備し、成長を支援することで、職場への満足度を高め定着率向上につながります。
ほかにも外国人介護人材を定着させるためのポイントを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
外国人介護人材が帰国する理由には、在留資格が理由のケースと、本人の意思によるケースがあります。資格取得・キャリアアップ支援など、外国人介護士に寄り添った取り組みを行えば、帰国を減らすことができます。ポイントをおさえて定着率を高めましょう。
当サイトでは、外国人介護人材の受け入れ戦略化・定着について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。