外国人介護人材にとって、日本は異国の地です。そのことを踏まえ、日本での介護業務を行うにあたって指導すべきことや教育体制の構築、サポートすべきことなどについて解説します。
たとえ日本語能力試験(JLPT)の合格者だったとしても、現場の会話で不自由を感じることもあります。例えば、現場で飛び交う「あれ」「あそこ」「それ」といった指示語や、利用者特有の話し方への対応は困難です。日本語能力検定は、「語彙や文法」についての理解度を確かめるものであり、「文脈を読み取る力」や「感情がこもった対話」といった介護の現場で求められる能力とは別物であるという認識を持ち、段階的な教育を行っていくことが大切です。
例えば、食事の禁忌や礼拝といった宗教的な背景や生活習慣などに加えて、それぞれの介護観の違いにも配慮する必要があります。外国人介護人材の中には「介護」という概念を持たない場合もあることから、「介護」の基本的な考え方の理解ができるようにゆっくりと進めていきます。
例えば「技能実習」は技能移転による国際貢献、「特定技能」は即戦力不足の解消といったように、在留資格により制度の趣旨が異なります。特に技能実習では実習実施計画に沿った指導が求められるため、指導員が訪問介護の可否、転職の制限などそれぞれの制度のルールの違いについて正しく理解することが大切です。
日本語におけるコミュニケーションをスムーズに行うには、まず「やさしい日本語」のルールを意識する必要があります。5つのルールは以下の通りです。
「離床」「含嗽(がんそう)」など介護の専門用語や、地域の方言については、イラストや写真付きの「現場専用用語集」を作成して教えることがおすすめです。入浴や食事、排泄などのシーン別に整理すると、定着する速度が上がります。
時には、何かを話しかけたときに理解していなかったとしても「はい」と答えてしまうこともあります。そのため、「わかりましたか?」という確認ではなく、「今から何をするか教えてください」「どのような注意が必要ですか?」など、自分の言葉で説明をしてもらうオープンクエスチョンの徹底がポイントです。この対応によって、勘違いによるヒヤリハットを未然に防ぐことができます。
入職後の教育については、段階的に業務範囲を拡大していくことがポイントです。1ヶ月目から3ヶ月目までの目標イメージとしては、下記のような形になります。
上記のように、段階を踏んでひとつひとつ目標をクリアできるように進めていくことが大切です。
複雑な手順を説明する場合には、文字に頼らずに動画やイラストを活用した視覚的なマニュアルを用意することがおすすめです。文字情報は最小限にして、イラストで表現すれば言葉の壁に左右されません。このように視覚的マニュアルを整備することによって、誰が指導しても一定のクオリティを保てる教育環境を用意します。
実務指導を担当する指導員とは別に、「メンター」をおくこともおすすめです。外国人介護人材が日々の業務の中で相談しやすい環境を整え、孤独感を解消することによって離職防止につながります。また、メンターを孤立させないように、管理者側が定期的に状況をヒアリングし、事業所全体でサポートする姿勢を見せることが大切です。
「できることを奪わない」が日本の介護です。良かれと思って食事を口に運ぶ、服を着せるといったことは利用者の身体機能を衰えさせる可能性があるとされています。この点をデータで説明し、「見守ることも大切な介助」という意識の共有を行い、自立支援の考えを伝えます。
介護の現場では、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」が欠かせません。これは日本特有の職場コミュニケーション手法ですが、その重要性を具体例とともに説明することで、報告・連絡・相談の大切さについて知ってもらい、習慣化させていきます。
外国人介護人材が離職してしまう原因のひとつに「人間関係」が挙げられます。離職を防ぐためにも、日本人職員に対して「ゲストではなくともに働く仲間」であることや、相手の国や文化、宗教などを学ぶ研修を実施するなどして、外国人介護人材が「ここなら安心して働ける」と感じられる環境を整えることが大切です。
長期定着してもらうには、将来に向けての展望が必要です。例えば、特定技能から介護福祉士の資格を取得するなど、ステップアップの道筋を具体的に示します。さらに、学習時間の確保や模擬試験の実施など、組織として資格の取得をバックアップする姿勢を示すことによって、本人のモチベーションを高められます。
仕事のほかにも、生活面の悩みは精神を消耗する原因のひとつです。悩みを抱えないためにも、JICWELSなど外国人相談窓口の利用を促すほか、定期的に1対1の面談を行うことで、小さな不安をキャッチアップしていきます。メンタルケアを丁寧に行っていくことも、離職対策に効果的といえます。
外国人介護人材を受け入れる場合には、言葉や文化、制度の壁を認識した上で、「やさしい日本語」や視覚的なマニュアルを用いた教育体制を構築することが大切です。また、キャリアパスの提示やメンター制度などを用いて孤立を防ぐための定着支援にも取り組み、外国人介護士が「長く働きたい」と感じられる職場づくりを行うことが大切です。