企業の人材育成に要したコストの一部を助成する人材開発支援助成金。労働者のスキルアップに積極的な企業は、ぜひ注目したい助成制度です。当ページでは、人材開発支援助成金の概要や申請条件、補助金額、補助・助成対象、申請の流れについてご紹介しています。
※人材開発支援助成金制度は、たびたび制度内容が改定されます。申請を検討する際には、検討する時点における最新の情報をご参照ください。
>>2024年1月時点での主な参照先
厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
人材開発支援助成金とは、企業が人材育成で自己負担した費用の一部を助成する厚生労働省管轄の制度。雇用保険適用事業所であることなど、一定の要件を満たした企業に対し、従業員が自分の職務に関連した教育・訓練を受けた際、その教育・訓練に要した自社コストの一部を助成します。2024年1月現在は7種類のコースがあり、それぞれのコースの趣旨に応じて、要件や助成金額は異なります。
類似の制度にキャリアアップ助成金がありますが、キャリアアップ助成金はアルバイトやパート、派遣労働者などの非正規雇用労働者の正社員化などを目的とした制度。一方で人材開発支援助成金は、雇用保険の被保険者のスキルアップを目的とした制度です。両者を明確に区別しましょう。
7種類のコースのうち主に利用される「人材育成支援コース」では、主に次のような申請条件が設定されています。
1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
2. 職業能力開発推進者を選任していること
3. 労働組合などの意見も踏まえ、事業内職業能力開発計画を作成し、その内容を労働者へ周知していること、など
また、次のような事業所は人材開発助成金の対象外となります。
1. 申請の前年度以前に労働保険料を納付していない事業所
2. 性風俗関連の事業所、およびその営業の一部を受諾している事業所
3. 暴力団と関係のある事業所、など
申請要件、および助成金の対象外となる要件については、ほかにも多くの規定があります。詳しくは厚生労働省の資料をご確認ください。
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厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
全7コースのうち、主に利用されている「人材育成支援コース」を例に助成金の種類・金額・支給上限額を見てみましょう。
支給対象訓練 | 経費助成 | 賃金助成 (1人1hあたり) |
OJT助成 (1人1コースあたり) |
---|---|---|---|
人材育成訓練 | 45~70% | 760円 | - |
認定実習併用職業訓練 | 45% | 760円 | 20万円 |
有期実習型訓練 | 60~70% | 760円 | 10万円 |
訓練の条件により助成経費の率は異なります。また、中小企業以外の助成は別途で設定されています。詳しくは厚生労働省の資料をご確認ください。
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厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
人材開発支援助成金は、労働者のスキルアップを目的とした訓練費用の一部を助成する制度です。そのため助成金の支給対象者は事業者であり、労働者本人に支給されるお金ではありません。
また、支給された助成金は、あくまでも人材教育・訓練に関連したコストに充当する形となります。他の使途に充てた場合、不正受給となるのでご注意ください。
全コースの中から「人材育成支援コース」を例に、申請手続きの流れを確認します。
1. 申請の準備
職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定など、人材開発支援助成金の申請に向けた準備を整えます。
2. 職業訓練実施計画届などの作成・提出
労働者の訓練開始日から起算して1か月前までに、職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、および必要書類を作成し、各都道府県労働局へ提出します。なお、提出は雇用保険事業所単位で必要となる点にご注意ください。
3. 労働者の訓練を実施
社内・社外講師による事業所内訓練、教育訓練施設における事業所外訓練、事業所内におけるOJTなど、実際に労働者の訓練を実施します。訓練に要した費用は、いったん事業所が負担する形となります。
4. 支給申請書などの作成・提出
労働者の訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書(様式第4号)、および必要書類を作成のうえ、各都道府県労働局へ提出します。
5. 助成金の支給(不支給)決定
提出された書類が審査され、労働局から適正と判断されれば助成金の支給が決定します。なお、支給申請書の提出から審査終了までは数か月~1年以上を要することが一般的です。
人材開発支援助成金における主な注意点を2点ほど確認しておきましょう。
当ページの冒頭でも触れましたが、人材開発支援助成金制度は、たびたび内容が改定されます。昨年度まで存在したコースが消滅・統合したり、逆に新たな規定が追加されたりすることもあります。
申請を検討する際には、必ず厚生労働省がリリースしている最新情報を確認しましょう。
支給申請書の提出から支給までに、数か月から1年以上を要することが一般的です。審査に長い期間がかかることを念頭に置いた上で、社内の予算計画等を検討するようにしましょう。