介護業界における人材不足への対策として、一部の介護施設では外国人介護士の採用を進めています。言葉の壁という不安はあるものの、外国人介護士の採用は、決してネガティブな選択肢ではありません。
厚生労働省が公表している資料によると、令和5年10月時点での外国人労働者数は2,048,675人。令和4年の同時期に比べて225,950人の増加で、この何年も増加傾向は続いています。
このうち、介護業界が属する「医療・福祉」分野における外国人労働者は90,839人。業界別では6番目に多い人数で、全体の4.4%を占めています。令和4年の4.1%に比べ、全体での比率は微増した形です。
昨今、マスコミなどでも介護事業所における外国人介護士の雇用が話題となることがありますが、現実として外国人介護士を受け入れるにあたり、どの事業主も一定の不安を隠せません。
異なる文化や価値観の中で育ってきた人材である以上、日本人スタッフとの人間関係や信頼関係の構築に不安を感じる事業主もいますが、何よりも大きな不安として挙げられるのが、言葉の壁でしょう。
介護はスタッフや利用者とのコミュニケーションなくして成り立たない仕事ですが、スタッフや利用者とのコミュニケーションは全て日本語で行われます。日本語を十分に理解していない外国人介護士が現場で働くことになった場合のイメージは、ほとんどの事業主がイメージできず不安になることでしょう。
この不安について、すでに外国人介護士を採用した事業所「社会福祉法人 平成福祉会」の中村さんは、インタビューで次のように話しています。
実は、私自身が最初は否定的だったんですよ。言葉も通じないし、自分が外国人の方と働くということを想像していなかったので、本当にできるのだろうか?と不安で。
(面接において)国柄や本人の性格もあるとは思いますが、慣れない異国で介護の仕事を志す彼ら彼女らは、やはり覚悟が違うのかなと感じました。
ですから、人手不足解消のためというよりは、純粋に「一緒に働いてみたい」気持ちが徐々に大きくなったんです。そういう想いも素直に現場スタッフに伝え、自分と同じように不安を軽減できるよう努めました。
既に現地で6ヶ月ほど研修を受けた後だったので、ある程度日本語が話せるかと思っていましたが、来日時点では2人ともあまり話せなかったですね。
なので、まずは日本人スタッフの補助をつけながら、通常の業務を担ってもらいました。
慣れない環境に対し、順応性が高い傾向はあると思います。日本語のコミュニケーションは難しくても、距離の詰め方が上手な子が多くて。
外国人介護士の採用にあたり、中村さんは最初から言葉の壁という不安をお持ちのようでした。実際に採用してからも、言葉の壁を感じることはあったようですが、仕事への覚悟や順応性の高さなど、言葉の壁というマイナスを埋めるプラス面も多く発見できたようです。
外国人介護士の採用において特に不安の材料となるのが言葉の壁。日本語が堪能な状態で来日する外国人介護士はほとんどいないため、この問題は避けられない現実として捉えるべきでしょう。
ただし、日本語も一定のルールを持つ言語である以上、外国人介護士が日本語へ習熟することは時間の問題。日本人スタッフからの指導やコミュニケーションを通じ、やがてほとんど日本語に不自由のない介護士へと成長することでしょう。
この成長過程で大切なポイントになるのが、日本語を教える日本人スタッフの心構え。外国人介護士の採用に際し、日本人スタッフから「目先の人手不足を埋めるため」と理解されてしまっては、外国人介護士を育てるという前向きな気持ちが生まれません。結果、日本語の指導やコミュニケーションも希薄となり、日本人スタッフと外国人介護士の労働意欲が同時に下がるリスクも懸念されます。
外国人介護士の採用にあたっては、事業主がその真意をしっかりと日本人スタッフへ伝えることが大事。外国人介護士の採用が、本人にとっても日本人スタッフにとっても事業所にとっても大きなメリットを生み、ひいては利用者に対するサービスの質の向上につながることを、日本人スタッフ全員へ十分に浸透させましょう。
つまるところ、事業主の熱意・覚悟・行動量が外国人介護士採用における不安解消の最大のポイント、と言えます。
外国人介護士の受け入れの現状、採用における現場の不安、不安を解消する対策などについてご紹介しました。
採用にあたり不安はあって当然ですが、言語や文化背景の異なる外国人であっても、日本人と同じく慈しみの心を持つ人間です。覚悟を持って来日する彼ら、彼女らを、私たち日本人は敬意を持って迎えるべきでしょう。
当サイトでは、外国人介護士の受け入れや教育に関する多くのノウハウをご紹介しています。外国人介護士の採用を検討している事業主の方のお役に立てれば幸いです。