非正規雇用労働者の雇用状況改善を目的に、厚生労働省が設けているキャリアアップ助成金。非正規雇用労働者のモチベーションアップから生産性向上が期待できる制度として、多くの事業主から注目されています。当ページでは、キャリアアップ助成金の概要や申請条件、補助金額、補助・助成対象、申請の流れについてご紹介しています。
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善などを行った事業主に対し、一定の要件のもとで助成金を支給する制度です。
正社員とその他の労働者との間の不合理な格差の是正、および対象労働者のモチベーションアップによる生産性の向上など、様々な効果が期待できる制度として注目されています。
助成金の対象となるためには、雇用保険が適用されていることなど、いくつかの要件を満たすことが必要。また、事業所や事業主だけではなく、労働者においても一定の要件を満たす必要があります。
助成金額は条件により異なりますが、「生産性要件」を満たした場合には、1人あたり最大で72万円が支給されます。
キャリアアップ助成金制度は、外国人介護人材も対象に含まれています。ただし、全ての外国人介護人材が無条件に対象となるわけではありません。在留資格等を基準にした対象・非対象について、具体的には次の表を参考にしてください。
正社員化コース | その他のコース (処遇改善支援コース) | |
---|---|---|
外国人技能実習生 | 対象外 | 対象 |
就労目的で在留が認められる外国人 | 対象 | 対象 |
永住者 | 対象 | 対象 |
定住者 | 対象 | 対象 |
特定活動(EPA受入れ人材) |
対象 (※) | 対象 |
特定技能第1号 | 対象外 | 対象 |
特定技能第2号 | 対象 | 対象 |
※看護師・介護福祉士の有資格者は対象となりますが、試験合格前の人材は対象になりません。
外国人介護人材でキャリアアップ助成金を申請する場合には、一般的な申請手続きと同様、規定に従ったキャリアアップ管理者を設置し、かつ「キャリアアップ計画書」を作成する必要があります。
キャリアアップ助成金制度には、以下7種類のコースがあります。
いずれのコースを選択する場合でも、主に次の全ての条件に該当する事業者が助成の対象となります。
上記7種類のコースの中から、参考までに「正社員化コース」におけるキャリアアップ助成金の補助金額を見てみましょう。
なお、以下の表における「生産性向上要件」とは、「対象事業所の生産性が3年度前比で1~6%以上向上していること」と規定されています。
企業区分 | 条件 | 支給金額(1人あたり) |
---|---|---|
中小企業 | 有期雇用非正規労働者の正社員化 | 57万円 |
中小企業 | 有期雇用非正規労働者の正社員化、および生産性向上要件達成 | 72万円 |
中小企業 | 無期雇用非正規労働者の正社員化 | 28万5,000円 |
中小企業 | 無期雇用非正規労働者の正社員化、および生産性向上要件達成 | 36万円 |
大企業 | 有期雇用非正規労働者の正社員化 | 42万7,500円 |
大企業 | 有期雇用非正規労働者の正社員化、および生産性向上要件達成 | 54万円 |
大企業 | 無期雇用非正規労働者の正社員化 | 21万3,750円 |
大企業 | 無期雇用非正規労働者の正社員化、および生産性向上要件達成 | 27万円 |
キャリアアップ助成金は、国の制度趣旨に応じて自社の労働者のキャリアアップを実現させた事業主に支給されます。
支給された助成金の使い道として、労働者本人のインセンティブに充てることは事業主の自由ですが、基本的に労働者へ支給されるお金ではありません。
キャリアアップ助成金の申請の流れについて、上記7種類のコースの中から「正社員化コース」の例を見てみましょう。
事業所ごとにキャリアアップ管理者を決め、具体的なキャリアアップの取り組みに関する計画書を作成します。管理者の独断ではなく、労働者とも協議の上で計画を検討しましょう。作成した計画書は管轄のハローワークへ提出します。
非正規雇用労働者の正社員転換に関する条件等を策定し、既存の就業規則や労働協約に内容を反映させます。改定後の就業規則等は、管轄の労働基準監督署へ提出します。
なお、正社員への転換に関する規定では、「転換前6か月分の賃金」に対して「転換後の6か月分の賃金が3%以上総額している」ことが必要条件となります。
改定後の就業規則等に基づき、対象となる非正規雇用労働者を正社員へと転換します。
正社員化した労働者を6か月以上雇用し、かつ改定した就業規則等に従った給与を支給します。
なお、正社員に転換した後の一定期間内に事業主の都合で対象労働者が離職した場合、助成金の支給対象外となります。
規定通りに6か月間の給与を支給した後、支給申請書類を作成してハローワークに提出します。提出書類が適正と判断されれば、事業主へ助成金が支給されます。
なお、支給申請書類は「6か月分の給与を支給した翌日から2か月以内」に提出しなければ、支給対象外とされる可能性があるのでご注意ください。
積極的にキャリアアップへ向けた取り組みを行うことで、労働者のモチベーションアップにつながります。労働者のモチベーションアップは利用者の満足度向上にもつながり、長期的には安定経営や安定採用に大きく貢献することでしょう。
上でもご紹介した通り、キャリアアップ助成金制度は外国人介護人材も対象です。ぜひ積極的に制度を活用し、施設の安定を目指しましょう。
以下のページでは、介護士採用時に活用できる補助金・助成金を一覧でまとめています。あわせて参考にしてみてください。