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外国人介護人材の研修で大切なこと

日本人の労働人口が減っていく中、介護を必要とする人口は増えていきます。外国人は介護業界にとって、不可欠な人材といえるでしょう。しかし、受け入れにあたっては課題があります。課題を解決できる研修を実施することが大切です。ここでは、外国人介護人材を活かすための研修についてまとめました。

外国人介護人材を雇用するときの課題

日本語の壁

介護は対人サービスの中でも、深いコミュニケーションが必要な仕事です。言語の壁が大きな課題であることは、想像に難くありません。特に日本語は、他言語と比べて難易度が高い言語とされています。同じ発音で意味が異なる単語はもちろん、外国語には訳せない感覚表現も多く、外国人には理解しづらい言葉が少なくありません。しかし、介護においては、感覚表現で伝えていることの意味を理解する必要があります。

在留資格を取得している外国人は一定の日本語能力を有していますが、他の職業より繊細な日本語力を必要とする介護サービスは、日本語の壁が高い職種といえます。

コミュニケーション文化の違い

介護サービスで必要なコミュニケーションは、利用者とのコミュニケーションと職員とのコミュニケーションがあります。利用者は外国人に介護されることに不安を感じる人が少なくありませんが、実際に介護されてみると問題ないという声が多いです。

参照:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」

介護サービスのコミュニケーションで課題になるのは、職員とのコミュニケーションです。「業務指示が伝わらない」「ニュアンスの違いが伝わらない」などで、依頼した仕事ができていないといったことが起こりやすいことは否定できません。文化の違いから生じる価値観の違いもコミュニケーションに影響します。受け入れ体制の構築が課題です。

在留資格

外国人介護人材の在留資格には、日本と相手国の経済活動の連携強化を目的とした「EPA(経済連携協定)」、専門職への外国人労働者の受け入れを目的とした「在留資格 「介護」」、相手国への技能移転を目的とした「技能実習「介護」」、一定の専門性を有する外国人の受け入れを目的とした「特定技能1号「介護」」があります。それぞれの制度について理解した上で、在留資格の管理を行うことが外国人を受け入れる際の課題のひとつです。

日本の介護福祉士養成校を卒業して介護福祉士を取得した外国人は、「在留資格 「介護」」を取得でき、在留期間は制限なしに更新できます。「特定技能1号「介護」」は、最大5年の在留資格です。この間に介護福祉士を取得すれば、「在留資格 「介護」」に変更できます。

外国人介護人材に求められる研修とは

介護職の倫理や他の職種との連携、事故や感染などのリスクマネジメントなどの介護の基本

文化や習慣が異なる国から来ている人材のため、基礎レベルの研修から実施することが大切です。日本より平均寿命が短い国の人の場合、80歳代以上の高齢者を見たことがない可能性もあります。介護職に求められる倫理や連携の重要性、事故や感染などのリスクについても研修する必要があります。

コミュニケーション技術

日本は、コミュニケーション方法が世界の中でも独特と言われています。日本特有の挨拶など、基本的なことからコミュニケーションを習得できるよう、研修カリキュラムを組みましょう。利用者とのコミュニケーションはもちろん、スタッフ同士のコミュニケーションが円滑にできるように指導する必要があります。

移動、食事、衣服の着脱、排泄及び入浴の介護

利用者の日常生活をサポートするためには、移動や食事、衣服の着脱、排泄、入浴の介護について学ぶ必要があります。準備や片付けからスタートし、利用者の身体介護まで段階的に研修を進めることが重要です。

認知症の理解

介護サービスに認知症の知識は不可欠です。認知症の人に接したことがない人も少なくありません。認知症という言葉自体を知らない可能性もあります。認知症とそのサポートに必要なことを習得してもらう必要があります。

障害の理解

障害がある人の介護をどのようにするのか、障害を理解した上で、介護方法を伝えます。OJTなどを通して、言葉と動作の理解を同時に進めていくような伝え方が求められます。

文化の理解

出身国によっては、介護は家族が行うもので、介護という概念自体がないこともあります。日本の介護の概念や自律支援を大切にしていること、利用者の尊厳など、日本の介護の基本姿勢も伝えるべきことのひとつです。

介護の日本語

介護で使う用語の習得も求められます。日本語の習得レベルが高くないことを想定した研修が必要です。日本語講師は介護の専門知識がないため、日本語講師と介護の講師が一緒に研修を進めていきます。集団研修を行う場合は、日本語レベルが同じ層でまとまるよう設定したいです。

参照元:【pdf】株式会社日本能率協会総合研究所 平成31年3月/外国人介護人材に対する研修の手引き https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5320201.pdf

研修時に気を付けること

在留資格よって就労時の技能レベル・日本語レベルが違う

在留資格によって、介護技能レベルや日本語レベルには違いがあります。「在留資格 「介護」」は、介護の専門学校を卒業しているため、介護の技術レベルや介護用語の習熟度は高いです。研修時は、レベルに合った内容を計画しましょう。

異文化への理解

日本の文化を知ってもらうことは大切ですが、そのためには、指導者が出身国の文化を知っておくことが重要です。どこに違いがあるのかを理解しなければ、指導ができません。異文化を否定するような指導にならないよう配慮することも大切です。

外国人への日本語教育

インネシア人への日本語教育

インドネシアでは、日本語学習者が多く、小学校や中学校でも日本語に触れています。発音が似た言葉も多いです。インドネシア語の母音と日本語の母音が似ているため、近い音の言葉から教えると習得してもらいやすいでしょう。

ベトナム人への日本語教育

ベトナムも日本語教育が盛んにおこなわれている国です。第二言語として、英語以外に日本語を取り入れている学校もあります。日本式の教育も導入されているため、文化面でも受け入れやすいでしょう。ベトナム語の漢越語は音が日本語の音と似ています。漢越語を活用すると学びやすいです。

タイ人への日本語教育

タイは、東南アジアで日本語学習者が2番目に多い国です。後期中等教育学校では、日本語が第二外国語に加えられています。介護の日本語も習得してもらいやすいでしょう。絵や写真、動作を通して伝えると伝わりやすいです。

外国人に活躍してもらえる研修を計画しよう

外国人介護人材を受け入れるときに課題となるのは、言葉と文化の違いです。特に、スタッフの連携に齟齬が生じやすいため、業務に必要なコミュニケーション能力を育成できる研修を計画しましょう。出身国の文化・価値観を理解した上で違いを伝えることが大切です。