LIFE(Long-term care Information system For Evidence)は、日本語で「科学的介護情報システム」と称するソリューションです。介護施設運営に関する業務をシステム化して、エビデンスに基づく介護(科学的介護)の提供を支援し、全国どこでも適切なケアを受けられることを目指しています。
介護施設・事業所は、利用者の状態やケアの内容に関する情報を一定の様式で厚生労働省に送信します。収集されたデータに基づいて、介護施設・事業所にフィードバックが提供され、ケアの質向上に活用される制度です。義務ではありませんが、LIFEを活用すると報酬に加算があります。
LIFEには介護施設利用者の状態や利用しているサービス内容などを定期的に登録することが可能です。介護業界でも進められているDX化の一環であり、データの活用をすることにより提供する介護サービスやケアプランの質を向上させることに貢献できます。
LIFEに登録した情報やデータは厚生労働省に送信され、国やシステムからのフィードバックが受けられます。フィードバックを受けたデータや情報は運営改善に活かすことができるため、PDCAサイクルの強化が期待されます。
介護ビジネスはサービス業であることから、提供されるサービスの質が非常に重要な要素となります。記録した情報や受けたフィードバックを踏まえ、利用者の健康状態やケア内容を把握し提供サービスの質改善に役立ちます。
介護事業においては「加算」が収益に大きく関わってきます。LIFEを導入しデータ提出を行った場合、「科学的介護推進体制加算」を取得することができるため、更なる収益の向上・改善が期待できます。
介護ビジネスでも「データ経営」の重要性が高まっています。LIFEを活用し、利用者の状況や提供サービスのデータ収集をすることで、介護職員の指導や教育に役立てることができます。
今までになかったシステムを導入する場合、どうしても現場では負担が発生してしまいます。システム導入後は効率化が期待できますが、導入当初は現場スタッフの入力作業が増える可能性があります。
新たなシステムを導入するにあたっては必要になるICT機器やシステム整備などにかかるイニシャルコストが負担になります。中長期的には業務効率化につながり、経済的にも合理的である可能性がありますが、自己資金や借入、リース契約などによる初期投資が必要です。
収集するデータには利用者の情報が含まれることがあるため、利用者本人やご家族に了承・理解を得なければいけません。特に近年では個人情報管理が厳しくなっていることから、きちんと対応しておく必要があります。
LIFEを導入する際には現場で混乱が発生する可能性がありますので、きちんと事前に準備をしたうえで導入する必要があります。必要となるICT機器の手配や整備のほか、導入に向けたスタッフへの研修や教育、導入後に想定しているデータ収集の仕組みづくりなどを行ってから導入するようにしましょう。
LIFEのような業界標準であるシステムを導入するにあたっては、専門的な知識を持つコンサルタントのサポートを受けたり厚生労働省の支援を活用することがおすすめです。どんなコンサルタントがいるのか、どういった支援を受けられるのかなどの情報を事前に調べておきましょう。
介護業界でDX化を進めるには、多くの課題に取り組む必要があります。このサイトではほかにもさまざまな情報を紹介・解説していますので、ぜひチェックして参考にしてください。
引用元:https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/130569.pdf
個別機能訓練加算(Ⅰ)イまたはロを算定している利用者を対象とした加算です。月額20単位が算定できます。
算定の主な要件は、LIFEへの「生活機能チェックシート」と「個別機能訓練計画書」の提出、そしてLIFEからのフィードバックを活用したPDCAサイクルの実施です。新規計画作成時や変更時には翌月10日までに提出し、最低でも3か月に1回は定期的な提出が必要とされています。
この加算を算定するにあたっては、LIFEの利用登録や操作職員の設定など、事前の準備が重要です。適切なデータ提出とフィードバックの活用で、より効果的な個別機能訓練の実施が期待されます。
ADL維持等加算は、利用者の日常生活動作(ADL)の維持・改善度を評価する加算制度で、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があります。主な算定要件は、評価対象期間が6ヶ月を超える利用者が10人以上いること、利用開始月と6ヶ月後にBarthel IndexでADL値を測定してLIFEに提出することです。
(Ⅰ)は調整済ADL利得の平均が1以上、(Ⅱ)は3以上(2024年度改定後)であることが求められます。評価対象は上位下位各1割を除外して計算されます。
データ提出は利用開始月と7ヶ月目(または最終利用月)に行い、算定期間は評価対象期間満了日の翌月から12ヶ月間です。単位数は(Ⅰ)が30単位/月、(Ⅱ)が60単位/月となっています。
この加算を算定する際は、正確なデータ測定と提出、そして継続的なADL維持・改善への取り組みが重要です。
利用者の栄養状態を適切に評価し、効果的な栄養管理を行うことを目的とした加算制度です。算定には、管理栄養士を1名以上配置し、多職種による栄養アセスメントを実施する必要があります。アセスメントの結果は利用者やその家族に説明し、必要な相談に応じなければいけません。また、LIFEへの情報提出を3ヶ月に1回以上行うことが要件となっています。
栄養改善加算との併算定は原則できないことに注意が必要です。ただし栄養改善サービスが必要と判断された月は例外的に許されています。毎月の体重測定やケアプランへの記載も忘れてはいけません。栄養アセスメント加算は月額50単位で算定できます。
口腔機能向上加算(Ⅱ)は、利用者の口腔機能の維持・改善を目的とした加算です。加算(Ⅰ)の基本的な要件を満たした上で、口腔機能改善管理指導計画等の情報をLIFEに提出し、そのフィードバックを活用したPDCAサイクルを実施する必要があります。
データの提出は、新規計画作成時や変更時、そして最低でも3ヶ月に1回行う必要があり、提出期限は翌月10日までとなっています。2024年度の改定では、計画書の記入項目が追加されるなど、より詳細な情報提供が求められるようになりました。
160単位/回で算定可能です。要介護者は月2回まで、要支援者および総合事業対象者は月1回まで算定できます。
LIFEシステムを活用して介護サービスの質向上を図る取り組みを評価するための加算制度です。(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、いずれも利用者の基本情報をLIFEに提出し、そのデータを活用してサービス提供を行うことが基本的な要件となっています。
(Ⅱ)は(Ⅰ)の要件に加えて、利用者の疾病や服薬情報などのより詳細なデータの提出が必要です。注意点として、(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできないことが挙げられます。またデータ提出は算定開始月の翌月10日までに行わなければいけません。利用者本人の同意を得ることも重要です。
2024年度の改定では、生活機能や認知機能に関する尺度の提出が新たに要件に加わりました。通所系サービスにおいては、40単位/月で算定できます。
施設入所者の褥瘡予防と適切な管理を促進するための加算制度です。(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、それぞれ3単位/月と13単位/月で算定できます。
両加算の共通要件として、入所時および3ヶ月ごとの褥瘡リスク評価、LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用、多職種による褥瘡ケア計画の作成と実施、そして定期的な計画見直しが求められます。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。また、原則として全入所者が対象となりますが、看護小規模多機能型居宅介護では要介護3以上の利用者に限定されます。低栄養リスク改善加算との併用は、褥瘡のある利用者に対してのみ不可となっています。
特に重要なのは、1人でも未評価の入所者がいると加算が算定できない点です。(Ⅱ)の算定には、褥瘡発生リスクがあった入所者に実際に褥瘡が発生しないことが条件となります。
排せつ支援加算は、入所者の排せつの自立を促進するための取り組みを評価する加算制度です。この加算には(Ⅰ)10単位/月、(Ⅱ)15単位/月、(Ⅲ)20単位/月の3つの区分があります。
主な算定要件は、3ヶ月ごとの医師または看護師による評価、LIFEへのデータ提出とそのフィードバックの活用、そして多職種による支援計画の作成と実施です。(Ⅱ)と(Ⅲ)の算定には、排尿・排便状態の改善が必要であり、特に(Ⅲ)ではおむつ使用からの脱却も条件となります。
これらの区分は併算定できません。また、評価と計画の見直しは3ヶ月ごとに行い、データ提出は翌月10日までに行う必要があります。2024年度の改定では、尿道カテーテル抜去も評価対象に加わりました。
自立支援促進加算は、入所者の自立支援と重度化防止に向けた取り組みを評価する加算制度で、月額300単位で算定できます。主な要件には、医師による6ヶ月ごとの医学的評価、多職種による支援計画の作成と実施、3ヶ月ごとの計画見直し、そしてLIFEへのデータ提出とそのフィードバックの活用です。
全入所者を対象としていて、画一的な取り組みは認められません。また、リハビリテーションのみでは算定できないので、入所者と家族の希望を考慮した包括的な計画が必要です。
栄養マネジメント強化加算は、入所者の栄養状態の改善と維持を目的とした加算で、1日あたり11単位で算定できます。主な要件には、利用者50人に対して管理栄養士1名以上の配置、低栄養リスクの高い利用者への週3回以上のミールラウンド実施、多職種による栄養ケア計画の作成と実施、そしてLIFEへのデータ提出とそのフィードバックの活用です。
全入所者を対象としていて、委託先の管理栄養士は配置人数に含めることができません。また、3ヶ月ごとのLIFEへのデータ提出が必要で、経口維持加算の算定の有無によって提出する項目が異なります。
入所者の口腔衛生状態の維持・改善を目的とした加算で、(Ⅰ)は90単位/月、(Ⅱ)は110単位/月で算定できます。歯科医師の指示を受けた歯科衛生士による月2回以上の口腔衛生管理、口腔衛生管理計画の作成、そして介護職員への技術的助言・指導が主な要件です。(Ⅱ)では、これらに加えてLIFEへのデータ提出とそのフィードバックの活用が求められます。
2024年4月から施設系サービスで義務化されます。また、訪問歯科衛生指導料が月3回以上算定された場合は、この加算は算定できません。全入所者が対象となるため、施設全体での取り組みが必要です。
「介護事業」は社会貢献のイメージが強いため「利益を追求する」ことに抵抗を感じる方も少なくありません。しかし、持続可能なサービスを提供するためには、適切に収益を上げることが重要です。DX化を積極的に進めることで、健全な経営を目指していきましょう。