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介護ロボット

自立支援によって高齢者の生活の質の維持・向上を目指すと同時に、介護者の負担軽減も実現するため、介護ロボットの開発・導入が支援されています。厚生労働省と経済産業省は、6分野13項目を重要分野と定めています。ここでは、介護ロボットでできることや、導入する際の注意点、補助金などを紹介します。

介護ロボットとは

介護ロボットとは、「情報を感知(センサー系)」「判断し(知能・制御系)」「動作する(駆動系)」要素技術を有する知能化した機械システムのうち、介護利用者の自立支援・介護者の負担軽減に使われるものです。形や機能に明確な定義があるわけではありません。目的に合わせてさまざまなタイプがあります。

介護分野のDXはやるべきことが多く、何から取り組めばいいか迷うかもしれません。次のページでは、介護業務のDX化のメリットや具体例などを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

介護業務のDX化ついて詳しく見る

介護ロボットでできること

介護支援

介護者の身体に負担がかかる介助をサポートするのが、介護支援型ロボットです。主に移乗や入浴、排泄などの身体への負担大きい業務で活躍します。

具体的には、移乗介助の際に介護者が装着することで足腰への負担を軽減するロボットや、排泄の際に衣服着脱の支援をするロボットなどがあります。

介護ロボットであれば、要介護者も気遣いや遠慮をする必要がありません。介護者の負担だけではなく、身を委ねる要介護者の不安や緊張などもやわらげることができるでしょう。

自立支援

要介護者の日常生活における動作をサポートするのが、自立支援型ロボットです。必要な介護は人それぞれであり、軽いサポートがあれば自立した生活が送れる人もいます。たとえば膝に痛みがある場合、装着することで膝にかかる負担を軽減し、歩行や立ち座りなどの動作をアシストするロボットがあります。

このように、自分でできなかったことをできるようにするのが自立支援型介護ロボットの役割です。

自立した生活を送ることは、要介護者の心身の負担軽減へとつながります。

コミュニケーション・見守り

会話などのコミュニケーションを取る機能を持つのが、コミュニケーション型ロボット。認知症または一人暮らしの高齢者に異変がないか様子を見守るのが、見守り型(セキュリティ型)ロボットです。

コミュニケーション型ロボットは会話以外にも、レクリエーションのサポートをする機能を持ったタイプもあります。見守り型はセンサーを用い、異変を検知した場合に自動で介護者に知らせる機能などを備えています。

認知症高齢者の徘徊予防や転倒防止などに有効です。

介護ロボットが活躍する6分野13項目を解説

介護ロボットの種類は、できることや目的により6種類13項目に分かれています。アシストする対象が介護者なのか被介護者なのかという違いや、どのようなシーンのアシストをするかに着目すると、介護ロボットが理解しやすくなります。ここでは介護ロボットができることとして、6種類13項目を紹介します。

移乗支援

装着

ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行い、身体的負担を軽減する装着型の機器です。専用バッテリーで駆動し、介助者が一人で着脱できます。ベッド、車いす、便座間の移乗に使用できます。主に140~180cm程度の身長の被介護者に対応しています。介助者の腰痛リスクを減らし、効率的に移乗介助をおこなうための機器です。

非装着

ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う非装着型の機器です。主にベッドと車いす間の移乗時の抱え上げ動作をサポートします。介助者の身体ではなく、被介護者の体重を機器が支えます。抱え込み式やシート持ち上げ式、ベッド一体型など、タイプはさまざまです。非装着型も介助者の腰痛リスクを減らします。

移動支援

屋外

屋外の移動支援を行います。荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機です。利用者が一人で使用でき、歩行速度や歩幅、方向をリアルタイムで解析します。段差や坂道での走破性と安全性を確保できます。折りたたみ式で車に収納できるようになっています。電動アシスト機能も搭載されていて、高齢者の外出をサポートします。

屋内

屋内型移動支援ロボットは、高齢者の室内移動や立ち座り、特にトイレ関連の動作を支援する機器です。ロボット技術を用いて、トイレへの往復、トイレ内での姿勢の保持を支援します。被介護者が一人で使用できます。自立歩行をサポートし、立ち上がり動作をアシストするほか、歩行距離や姿勢、速度分析など、リハビリテーション機能を搭載しています。

装着

装着型移動支援ロボットは、高齢者が直接身につけて使用する機器です。ロボット技術を用いて、高齢者の外出をサポートし、転倒予防や歩行の補助といった役目を果たします。使用者が一人で装着可能です。歩行だけではなく、立ち座りの動作もサポートできます。歩行補助具との併用もでき、自立歩行者の転倒リスクのある動作を検知し通知する機能が搭載されています。

排泄支援

排泄物処理

ロボット技術で排泄物の処理と位置調節が可能なトイレです。排泄物を感知して自動で吸引・洗浄・乾燥を行います。臭いを防ぐ高性能フィルターを搭載していて、介護者の排泄処理の負担を軽減できます。感染リスクの低減にも貢献しています。介護保険でのレンタルが可能な機種もあります。

トイレ誘導

排泄を予測し、適切なタイミングでトイレへ誘導する機器です。超音波センサーで膀胱の状態を検知し、排泄予測を行います。尿のたまり具合を数値化して表示する機能、匂いセンサーによる排泄感知機能、介護者へのタイミング通知機能を搭載。オムツ使用の軽減、褥瘡予防、自立支援、介護者の負担軽減が期待できます。

動作支援

動作支援型排泄支援ロボットは、トイレ内での一連の動作をサポートする機器です。立ち上がりや着座動作の支援、下衣の着脱アシストなどの機能があります。身体を、より安全に支持するカーボンパイプ製支持アームが採用されていて、自立を促進します。一人の介護者で操作でき、介護者の負担軽減と要介助者の尊厳維持、残存能力の向上が期待できます。

見守り・コミュニケーション

施設

介護施設で使用するセンサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォームです。居室の状況をリアルタイムで確認できます。遠隔コミュニケーションのためのビデオ通話機能も備えています。レクリエーションの司会進行のサポートもできるほか、AIによる自動応答で利用者の要望に対応できます。顔認証機能で利用者を識別し、個別対応も可能にしています。介護スタッフの業務負担軽減と利用者のQOL向上が期待できます。

在宅

在宅介護で使用する転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォームで、遠隔での見守りと安否確認が主な機能です。AIによる自然な会話機能や服薬や予定の通知機能、体操やレクリエーションのサポート、家族へのアクティビティ記録の送信などの機能が搭載されています。高齢者の孤独感軽減、生活リズムの維持、そして離れて暮らす家族の安心感向上に貢献します。

生活支援

ロボット技術を用いて自然な会話を実現している高齢者とのコミュニケーションを行う生活支援機器です。薬の服用や予定のリマインド機能、クイズや体操などのレクリエーション提供、顔認証機能による個別対応、異常検知時の通知機能を搭載しています。高齢者の孤独感軽減、認知症予防、生活リズムの維持、そしてQOL向上に貢献します。また、介護者の負担軽減にも役立ちます。

入浴支援

入浴支援

ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器です。脱衣室から浴槽まで乗り換え不要のキャリー一体型リフトを備えた機器などがあります。座面高さ調節ができ、着座・立ち上がり・洗体動作の負担を軽減し、被介護者の入浴の質と安全性を高めます。一人介助ができるようになり、介護者の負担を軽減できます。

介護業務支援

介護業務支援

ロボット技術を用いて見守り・移動支援・排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積して、高齢者等の必要な支援に活用することを可能にする機器です。情報収集と分析ができます。データを活用して効率的な支援を提供することに役立てるための機器です。介護記録の自動化、スケジュール管理や業務分担の最適化、AIによる介護計画の提案などの機能も搭載されています。介護スタッフの業務効率化、ケアの質向上、そして介護者の心身の負担軽減が期待できます。

介護ロボットを取り巻く状況

上述のとおり、介護ロボットにはさまざまなタイプがあります。そして介護従事者の不足により、我が国では介護ロボットの活用が推進されています。要介護者が増える中で、提供するケアの質を維持および向上させ、介護職員の負担を軽減、効率化することで人材確保をしていくためです。

しかし実際には、「令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査」において、介護事業所全体の80.6%が「いずれも導入していない」と回答しました。導入の割合がもっとも高いのが見守り・コミュニケーションロボットで、3.7%。ついで入浴支援が1.8%、移乗介助(装着型)が1.5%となっています。いずれも多いとはいえないのが現状です。

その理由として、導入コストや誤作動の不安、ケアにロボットを活用することへの違和感などが、高いハードルとなっています。

参照元HP:【PDF】介護労働安定センター(http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2021r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf)
【調査概要】公益財団法人介護労働安定センターが令和2年10月1日~10月31日の間に 介護サ-ビス情報公表システム等のデータベースから介護保険指定介護サ-ビス事業を行う事業所を対象に実施。

介護ロボットの導入事例

ケアの質の確保・職員の負担軽減の度合いを実証するため、夜間見守り機器を複数導入した事例です。3種類の見守り機器を28の施設で導入し、入所者の 10%程度に見守り機器を導入する新規導入のパターン、入所者の50%から80%程度に見守り機器を増やすパターン、そして見守り機器を全床導入するパターンで実証を行いました。結果として、「直接介護」と「巡回・移動」の合計時間が、導入前と比較して導入後に12.4分(5%)減少したことが報告されています。見守り機器の導入により介護スタッフの業務効率が向上し、夜間の負担が軽減されたことが分かりました。

参照元HP:厚生労働省老健局高齢者支援課「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する 効果測定事業 報告書」(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001252896.pdf)

介護ロボット導入の支援・補助金について

介護事業所に対する業務改善支援事業

介護サービス事業所の生産性向上を目的とした支援事業です。業務課題の抽出と解決支援、職場環境の改善、業務内容と役割分担の明確化を行います。また、介護ロボットやICTの活用による職員の負担軽減も重要な評価項目です。業務コンサルタントによる個別支援が最低3回提供されます。

介護ロボット導入支援事業

介護現場の負担軽減と質の向上を目的とした補助金制度です。介護ロボットの購入費を補助します。対象となる介護ロボットは、移乗支援、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援の場面で使用されるものです。また、ICT導入支援も含まれていて、記録業務から請求業務までを一貫して行える介護ソフトの導入も補助対象となっています。

ICT導入支援事業

介護サービスの質の向上と介護現場の生産性向上を目的とした補助金制度です。介護事業所のICT化にかかる費用として介護ソフト、タブレット端末、インカム等のICT機器の導入費の一部を補助します。記録業務から請求業務までを一貫しておこなう介護ソフトの導入も対象です。

人材確保等支援助成金

雇用創出や人材の確保、定着を目的とした助成金制度です。サービス業や建設業など、少子高齢化による人材不足に直面している業種を対象としていて、介護も対象です。各都道府県労働局への雇用管理制度計画の提出と計画の実施、目標の達成、終了後2カ月以内に各都道府県労働局へ助成金の支給申請書を提出する手順で助成金を受けます。

業務改善助成金

中小企業・小規模事業者の生産性向上と従業員の賃金引上げを支援するための制度です。介護施設も対象に含まれます。生産性向上のための設備投資費用の一部を助成するもので、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることが条件です。機械設備導入、コンサルティング、人材育成、教育訓練などが対象となります。

働き方改革推進支援助成金

中小企業の働き方改革を支援するために国が設けた助成金制度です。労働時間短縮や年次有給休暇取得促進、生産性向上を目的としています。企業規模や取り組み内容に応じて支給額が決定されます。対象経費の合計額の3/4(一部の場合は4/5)が助成され、賃金の引き上げを行う場合は追加の助成を受けることができます。

導入する際の注意点

操作するための知識と慣れが必要

新しい技術が搭載された介護ロボットを使いこなすには、知識や慣れが必要になります。

説明などをおろそかにすると、現場で使いこなせず導入した意味がなくなる恐れがあるため注意しましょう。

介護ロボットの中には、ロボット自体の重さが負担になったり、装着に時間がかかったりすることで不満を持たれるものもあります。まずは正しい使い方と使用した際のメリット、魅力を知ってもらうことが重要です。

設置や保管スペースが必要

介護ロボットを導入する場合、設置や保管のスペースを確保する必要があります。

中でも移乗介助に使用する非装着型の介護ロボットなどは大きいものが多いです。小規模な介護事業所や一般家庭では、スペースを確保できない可能性もあります。

介護ロボットのサイズは、種類によってさまざまです。導入前に確認し、設置や保管スペースを確保しておきましょう。

導入する際の相談先

介護ロボットを適切に導入すれば人材不足対策が可能

介護ロボットは、介護者の負担を軽減し、被介護者の安全や生活のクオリティー向上に貢献します。利用シーンに合わせて介護ロボットを活用することで、人材不足の問題を改善できます。

介護業界は、効率化・低コスト化が必須となっています。介護ロボットだけではなく、外国人介護人材も取り組みのひとつです。当サイトでは、外国人介護人材の受け入れ戦略化・定着について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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