少子高齢化により要介護者が増える中、深刻な人手不足が問題となっている介護業界。こうした状況を受け、注目されているのが介護ロボットです。ここでは、介護ロボットでできることや、導入する際の注意点などを解説しています。
介護ロボットとは、ロボット技術を応用し、利用者や介護者の負担軽減を目的として作られた介護機器のことです。
厚生労働省では「情報を感知(センサー系)」「判断し(知能・制御系)」「動作する(駆動系)」3つの要素技術を持ち、知能化した機械システムと定義しています。
介護ロボットには明確な機能が定められているわけではありません。そのため形や機能など、種類はさまざまです。
介護者の身体に負担がかかる介助をサポートするのが、介護支援型ロボットです。主に移乗や入浴、排泄などの身体への負担が大きい業務で活躍します。
具体的には、移乗介助の際に介護者が装着することで足腰への負担を軽減するロボットや、排泄の際に衣服着脱の支援をするロボットなどがあります。
介護ロボットであれば、要介護者も気遣いや遠慮をする必要がありません。介護者の負担だけではなく、身を委ねる要介護者の不安や緊張などもやわらげることができるでしょう。
要介護者の日常生活における動作をサポートするのが、自立支援型ロボットです。必要な介護は人それぞれであり、軽いサポートがあれば自立した生活が送れる人もいます。たとえば膝に痛みがある場合、装着することで膝にかかる負担を軽減し、歩行や立ち座りなどの動作をアシストするロボットがあります。
このように、自分でできなかったことをできるようにするのが自立支援型介護ロボットの役割です。
自立した生活を送ることは、要介護者の心身の負担軽減へとつながります。
会話などのコミュニケーションを取る機能を持つのが、コミュニケーション型ロボット。認知症または一人暮らしの高齢者に異変がないか様子を見守るのが、見守り型(セキュリティ型)ロボットです。
コミュニケーション型ロボットは会話以外にも、レクリエーションのサポートをする機能を持ったタイプもあります。見守り型はセンサーを用い、異変を検知した場合に自動で介護者に知らせる機能などを備えています。
認知症高齢者の徘徊予防や転倒防止などに有効です。
上述のとおり、介護ロボットにはさまざまなタイプがあります。そして介護従事者の不足により、我が国では介護ロボットの活用が推進されています。要介護者が増える中で、提供するケアの質を維持および向上させ、介護職員の負担を軽減、効率化することで人材確保をしていくためです。
しかし実際には、「令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査」において、介護事業所全体の80.6%が「いずれも導入していない」と回答しました。導入の割合がもっとも高いのが見守り・コミュニケーションロボットで、3.7%。ついで入浴支援が1.8%、移乗介助(装着型)が1.5%となっています。いずれも多いとはいえないのが現状です。
その理由として、導入コストや誤作動の不安、ケアにロボットを活用することへの違和感などが、高いハードルとなっています。
新しい技術が搭載された介護ロボットを使いこなすには、知識や慣れが必要になります。
説明などをおろそかにすると、現場で使いこなせず導入した意味がなくなる恐れがあるため注意しましょう。
介護ロボットの中には、ロボット自体の重さが負担になったり、装着に時間がかかったりすることで不満を持たれるものもあります。まずは正しい使い方と使用した際のメリット、魅力を知ってもらうことが重要です。
介護ロボットを導入する場合、設置や保管のスペースを確保する必要があります。
中でも移乗介助に使用する非装着型の介護ロボットなどは大きいものが多いです。小規模な介護事業所や一般家庭では、スペースを確保できない可能性もあります。
介護ロボットのサイズは、種類によってさまざまです。導入前に確認し、設置や保管スペースを確保しておきましょう。