介護人材の確保は、高齢化の進む日本にとって喫緊の課題です。外国人介護職員の今後の必要性や、受け入れに当たって起こりうる懸念点、配慮すべき点などを理解して、スムーズな受け入れを目指したいものです。
在留資格「介護」を持つ外国人介護職員は、2019年末時点で592人。介護福祉士養成校の留学生は、2019年度の実績で2,037人でした。
技能実習生の受け入れ数は、2020年度12,068人。実習生を受け入れる介護施設も増加傾向です。
EPA介護福祉士候補生の受け入れ数は、2021年度655人。2020年1月1日時点で、3,587人のEPA介護職員が、804の介護施設で雇用されていました。
また、介護分野の特定技能1号は、2022年末時点で16,081人でした。
介護分野における外国人材は急激に増加していますが、需要に供給が追いついていないのが現状です。厚生労働省の推計によれば、2025年度には37.7万人もの介護人材が不足する見込みとなっており、外国人材への依存度は今後も高まっていくことが予想されます。
日本特有の考え方、習慣や文化は、日本人ばかりの中で生活していると意識することもありませんが、外国人と一緒に働く際には思わぬトラブルの元になることがあります。
施設の運営方針や働き方の基本ルール、利用者との接し方、医師や看護師とどのように連携するかなどを丁寧に説明し、トラブル回避に努める必要があるでしょう。
受け入れる側として、自分たちが外国人介護職員に何を期待するのかを、しっかりと考えておくことも大切です。
外国人介護職員に対しては、衣食住をはじめとした生活のサポートを、手厚く行う必要があります。住居の手配や契約のサポートはもちろん、ゴミ出しなどで近隣住民とトラブルにならないよう、生活上のルールも説明しなくてはいけません。
また、慣れない環境や仕事上のストレス、孤独感やホームシックに対しても、しっかりとしたケアが必要になります。
サポートに割く人手が必要なこと、外注の場合は費用が発生することは、押さえておきましょう。
ムスリムの女性が着用するヒジャブ、イスラム教の断食月ラマダンや日々の礼拝など、宗教上の配慮が必要になる場合があります。
宗教的な配慮については、施設のスタッフだけでなく、利用者にもあらかじめ説明を行って理解を求めておかないと、思わぬトラブルを招くかもしれません。
外国人介護職員がどのような配慮を望むのか、しっかりと聞き取りを行うことも大切です。
言葉による意思疎通の難しさや文化の違いから、共に働く日本人スタッフや利用者が、外国人介護職員に対して抵抗感を抱く可能性があります。
大きなトラブルを起こさないためには、事前にしっかりと説明をする、小さな行き違いを見過ごさず、丁寧に対応していくことが大切です。
また、故郷の歌やゲーム、祭りをはじめとした風習を紹介してもらう、料理を一緒に楽しむなど、積極的に異文化交流を行って、心理的な距離を縮めるのもいいでしょう。
介護保険制度が創設されたのは、2000年のこと。その後の13年で、介護職員は55万人から171万人まで増加しました。 一方要介護者は、2000年から2017年の間に218万人から633万人に増加。高齢化が進む日本では、要介護者は今後、加速度的に増加していくでしょう。
厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」によれば、2025年度の介護人材需要見込み253.0万人に対し、供給見込みは215.2万人で、37.7万人が不足する見込みです。
介護人材を確保するための取組として、職員の処遇改善、介護職の魅力向上、テクノロジーの導入といった対策が進められています。それでも、外国人材を受け入れなければとても追いつかないほど、人材不足は逼迫しています。