人生100年時代が掲げられている現代、高齢者が安心して暮らしていける社会の実現を目指し、国や都道府県は様々な取り組みを行っています。
それら取り組みの中から、ここでは高齢者住まい法をテーマに、その基本方針や関連する高齢者住居安定確保計画などについて解説しています。
高齢者住まい法とは、高齢者が安心して暮らしていける住環境の整備を目指し、2001年に施行された法律。国土交通省と厚生労働省の管轄下にある法律で、正式名称を「高齢者の居住の安定確保に関する法律」と言います。
施行に伴い、高齢者の住居に関する各種の整備が進められましたが、高齢者世帯の急増による高齢者住居の絶対的な不足などの問題が露呈。これを受け、2011年、高齢者住まい法はより現状に即した内容へと全面改正されました。
全面改正により、従来の高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)は廃止。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として一本化され、2024年となる現在も、各種優遇政策のもとでサ高住の整備が進められています。
高齢者が安心して暮らしていける住環境の整備が、高齢者住まい法の基本方針です。
単に高齢者向けの住宅を用意するだけでは、住む場所には困らないものの「安心して」暮らしていけるわけではありません。安心して暮らしていくためには、たとえば住宅をバリアフリー仕様としてもらうことや、各住居に緊急コールを用意してもらうこと、地域の福祉・医療サービスとの連携などが大切な要素になるでしょう。
高齢者が安心して暮らしていけるよう、住む場所を中心として包括的な支援体制を整えることが、高齢者住まい法の精神と言えるでしょう。
高齢者住居安定確保計画とは、高齢者住まい法に基づいて国土交通大臣・厚生労働大臣が策定した基本方針のもと、この基本方針に基づいて各都道府県が策定する具体的な計画を言います。
内容は地域の実情に応じて都道府県ごとに異なりますが、たとえば埼玉県では、サ高住などの供給目標設置とあわせて、次のような計画を掲げています(一部引用)。
お住まいの場所の高齢者住居安定確保計画については、各都道府県の公式HPで公開されているので、関心のある方はご参照ください。
2001年に施行された高齢者住まい法は、2011年、全面的に改正されました。主な改正点は、いわゆる「高円賃」「高専賃」「高優賃」の廃止、およびそれらの「サ高住」への一本化です。
高円賃とは高齢者の入居を拒まない住宅(高齢者円滑入居賃貸住宅)、高専賃とは専ら高齢者を受け入れる住宅(高齢者専用賃貸住宅)、高優賃とは高齢者に適した良好な住居環境を整えた住宅(高齢者向け優良賃貸住宅)のこと。2011年の法改正ではこれら3つの区分を廃止し、全てサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)へと一本化するとともに、都道府県知事の登録制度を創設しました。
サ高住の詳細は割愛しますが、おおむね高齢者住まい法や高齢者住居安定確保計画の趣旨に即した住居と理解しておけば良いでしょう。
本改正は、改正前の課題とされていた高齢者向け住宅の絶対的不足、医療・介護事業者との不十分な連携、行政の不十分な指導監督、制度の複雑性などの解消を目指しています。
全ての高齢者が、すぐに介護施設に入居する必要があるわけではありません。後期高齢者であっても、日々を健康に過ごしている方は大勢います。
一方で、いかに健康な方であっても、高齢である以上は日常生活に様々な懸念が生じやすいことも事実。現役を退いていれば、収入面の理由で簡単には一般賃貸住宅を借りることもできないでしょう。
高齢者住まい法の改正によるサ高住の充実は、高齢者が安心して暮らしていける社会の要となるのではないでしょうか。