外国人が日本で介護福祉士として就労するには、さまざまな課題があります。そのひとつが文化の違いです。ここでは、外国人介護福祉士を採用するにあたって知っておきたい異文化理解の大切さや、起こりやすい齟齬について事例を交えて解説します。
日本と外国では、様々な文化が異なります。ルールやマナー、考え方や価値観など、日本では常識とされることも、外国でそうとは限りません。そうした文化の違いから、日本で就労する外国人介護福祉士が戸惑ったり、不安になったりすることもあるでしょう。
さらに介護業務において、すれ違いが生じる可能性もあります。異文化を理解することは、そうしたトラブルを防ぐために大切なことです。
異文化理解は、相手の言動の理由や気持ちを知ることにつながります。文化や歴史的背景、宗教などによる価値観の違いを受け入れ、互いに尊重しあう組織体制づくりに取り組みましょう。
日本と外国では、時間に対する感覚が違うことが多いです。日本では時間厳守が当然ですが、外国では数十分程度の遅刻は問題がないこともあります。相手の国の時間に対する考えを理解した上で、日本の介護の現場でなぜ時間厳守が重要なのかを伝えるとよいでしょう。
また、外国人介護福祉士は在留資格ごとに定められた日本語能力を持って来日しています。しかし日本語能力は個人差が大きく、日本人同士と同じレベルのコミュニケーションは難しいのが実情です。
とくに介護の専門用語が難しいと感じている外国人介護福祉士も多いため、業務上のすれ違いが起きやすくなっています。イラストを活用するなど、互いに理解できるコミュニケーション方法を探しましょう。
そのほか、信仰の関係から礼拝の習慣がある外国人もいます。日本人にはあまり馴染みがないものでも、相手にとっては大切な習慣です。たとえば礼拝であれば休憩時間に行うなど、理解し尊重した上でルールを伝えるとよいでしょう。
一般的に、フィリピンは気さくで社交的な人が多い国です。フィリピンには初対面でも困っている人を助け、明るく笑顔で優しく接するといったおもてなしの精神を表す「フィリピーノ・ホスピタリティ」が浸透しています。
敬虔なクリスチャンが多い国のため、ボランティア精神や社会福祉の心が根付いているのも理由のひとつです。また、フィリピン人は家族を大切にする民族でもあります。
日本で介護職に就くのも、家族のためである人が多いです。こうした国民性から、介護福祉士として高齢者とも明るく接し、勤勉に介護業務に取り組んでくれる人材が多いでしょう。
ベトナムでは儒教の教えが浸透していることから、日本人に価値観が近い部分があります。一般的に勤勉で真面目な人が多い国です。
一緒に働く際は、異文化を理解し尊重しあえる関係を築きやすいでしょう。また、ベトナム人は家族を大切にします。仕事のために家族を犠牲にすることは基本的にありません。
高齢者や年長者を敬い親切にする習慣は、介護職に欠かせないホスピタリティです。勤勉で真面目、若いうちから国外で仕事を頑張りたいという意欲の高い人が多いため、積極的に介護の仕事に取り組んでくれるでしょう。
明るく温厚で、フレンドリーな人が多いインドネシア。インドネシア語は日本語に発音が近いことから、インドネシア人の日本語は聞き取りやすいといわれています。
コミュニケーション能力が必須の介護の仕事には有利ですが、一方で漢字の読み書きが苦手な傾向があるため、記録などの事務作業に配慮が必要になる可能性があるでしょう。
また、インドネシアの人口は理想的なピラミッド型です。日本とは反対に若い人材が多く、日本でも介護の仕事を頑張りたいという意欲のある若者が多くなっています。
国民の9割が敬虔な仏教徒であるミャンマー。現世で得を積めば来世で報われるという仏教の教えが根付いていることから、人の役に立つ介護の仕事にも真面目に取り組んでくれる人が多いです。
また、目上の人を敬う心を持っているため、職場での上司からの指示に素直に従える人も多いでしょう。また、ミャンマーの母語であるビルマ語は日本語と語順が近いため、日本語の上達スピードも早い傾向にあります。
親を敬い大切にする民族であり、長男長女が家計を支えることも多く、介護の仕事も家族のために意欲的に取り組んでくれるでしょう。
ネパールは国内問題や周辺諸国との関係から、他民族や多文化との関わりが深い国です。歴史的にさまざまな人や文化に触れる機会があり、観光に来る外国人も多いことから、社交的で寛容な人が多い傾向にあります。
日本で就労するにあたって、異文化への理解や多様性の尊重ができる人も多いでしょう。
また、ホスピタリティ精神が強いことも特徴です。大家族制が主流なため、日頃から高齢者に接しなれています。介護福祉士として欠かせない、ホスピタリティ精神を持った国民です。