高齢化の加速、および医療の発達等による人生100年時代を前に、全国では高齢者住まい法に基づいたサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の新設が進んでいます。
サ高住の増加は高齢者にとって頼もしい話ですが、必ずしも問題点がないわけではありません。当ページでは、サ高住の現状や問題点、対策などについて解説しています。
サ高住とは、比較的要介護度の低い高齢者に向けた各種サービス付きの賃貸住宅のこと。バリアフリー構造、安否確認システム、生活相談などが標準サービスとして付帯しているなど、高齢者住まい法にのっとった住宅です。
国土交通省では、サ高住の登録基準・入居者要件として次のように規定しています。
【登録基準】
ハード | ○床面積は原則25㎡以上 ○構造・設備が一定の基準を満たすこと ○バリアフリー構造であること(廊下幅、段差解消、手すり設置) |
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サービス | ○必須サービス:安否確認サービス・生活相談サービス ※その他のサービスの例:食事の提供、清掃・洗濯等の家事援助 |
契約内容 | ○長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないこととしているなど、居住の安定が図られた契約であること ○敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと 等 |
【入居者要件】
厚生労働省等の公開データを引用し、サ高住の現状を確認してみましょう。
社会的なニーズの高まりに加え、補助金制度や優遇税制なども背景に、サ高住の登録件数は右肩上がりで増加しています。
介護事業者が全体の約2/3を占め、次いで医療事業者、不動産業者、ハウスメーカーと続きます。おおむね想定通りの割合と言えるでしょう。
地価の違いなどもあり、大都市圏と地方圏とでは月額平均3.3万円もの差があります。
高齢者が安心して暮らせる住環境の提供がサ高住の目的ですが、必ずしも全てのサ高住が、その目的を反映させた十分なサービスを提供できているわけではありません。
サ高住に見られる主な問題点を見てみましょう。
少しでも多くの介護報酬を取得するため、入居者が必要としていないサービスを執拗に勧誘してくる業者があるようです。
なお、介護保険には要介護度に応じて支給限度額があるため、限度額を超えた利用料は入居者が自己負担しなければなりません。
サ高住の登録件数は右肩上がりに増加していますが、中には行政からの補助金受給を目的にサ高住を新設している業者もあるようです。
利益重視の業者が運営するサ高住は、サービスの種類や質が低下する可能性もあります。
サ高住の中には認知症患者に対応した施設もありますが、多くの施設は高齢者の自立を目的としているため、認知症の入居者へのサービスは手薄な傾向があります。
上記①~③の問題点解消に向けた対策として、次の3点が大切です。
サ高住のサービスを契約する際には、本当にそのサービスが必要かどうか、家族や他の入居者などにも相談して十分に検討しましょう。あわせて、すでに契約済みのサービスの中に不要なものがあれば解約を検討しましょう。
「行動規範遵守宣言確認書」とは、一般社団法人高齢者住宅協会が発行する信頼度の高い認定書。不適切な運営を行うサ事業者の排除を目的に、健全な運営を行っている事業者へ同法人が付与している認定です。
入居契約の際には、営業担当者に対して「行動規範遵守宣言確認書」の有無を確認してみましょう。
入居後に認知症が進行し、既存のサービスのみでは安心して暮らしていけなくなった場合には、別途で外部の介護サービスを利用することも検討してみましょう。認知症が進行して自立生活が困難になった場合には、サ高住を退去してグループホームへ移動することも選択肢となります。
大半のサ高住は高齢者のために誠意あるサービスを提供していますが、中には制度趣旨を忠実に実行していない業者があったり、そのような業者の勧誘に乗ってしまう高齢者がいたりなど、全ての問題がスムーズには解消しない現実もあります。
これら問題点を受け、国土交通省と厚生労働省、および各都道府県では、全ての高齢者が安心して暮らしていける社会の実現を目指し、サ高住を含めた様々な議論を進めています。