介護施設にはさまざまな種類がありますが、このページで紹介する「サ高住」は「サービス付き高齢者向け住宅」の略称であり、高齢者が安心して暮らすことを目的とした賃貸住宅のことをいいます。サ高住の現状や課題・問題点などを解説します。
サ高住とは、比較的要介護度の低い高齢者に向けた各種サービス付きの賃貸住宅のこと。バリアフリー構造、安否確認システム、生活相談などが標準サービスとして付帯しているなど、高齢者住まい法にのっとった住宅です。
国土交通省では、サ高住の登録基準・入居者要件として次のように規定しています。
【登録基準】
ハード | ○床面積は原則25㎡以上 ○構造・設備が一定の基準を満たすこと ○バリアフリー構造であること(廊下幅、段差解消、手すり設置) |
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サービス | ○必須サービス:安否確認サービス・生活相談サービス ※その他のサービスの例:食事の提供、清掃・洗濯等の家事援助 |
契約内容 | ○長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないこととしているなど、居住の安定が図られた契約であること ○敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと 等 |
【入居者要件】
引用:国土交通省住宅局安心居住推進課|サービス付き高齢者向け住宅の現状と課題https://www.mlit.go.jp/common/001222402.pdf
引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001222402.pdf
サ高住の事業運営を行っている事業者は介護系事業者が約3分の2を占め、次いで医療系事業者・不動産業者となっており、この上位3業種で90%を占めています。その中でも介護保険の対象となる「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているサ高住は約9%となっています。
引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001222402.pdf
少子高齢化が進みゆく我が国において、高齢者向けの住まい・施設の定員数は年々増加傾向にあります。すべての施設において右肩上がりの推移となっていますが、中でもサ高住の伸びは他施設に比べて大きくなっており、平成29年12月時点で約22.5万戸と認知症グループホームと同程度の普及数となっています。
引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001222402.pdf
厚生労働省が実施した実態調査(アンケート)によると、入居者の要介護度や認知症が進行した際、要介護者のための設備(特殊浴槽など)の整備や看取りを行える体制の確保などを課題であると感じる事業者が多くなっています。他にも見守りの回数や生活相談の回数が増えたことから職員の負担が大きくなったことなども課題として挙げられており、施設単体としてだけではなく周辺地域も含めた体制整備が必要となっています。
引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001222402.pdf
現場ではさまざまな課題を感じている一方、中には「必要以上のサービスが提供されているのではないか」という指摘をされるケースもあります。大阪府が実施した調査結果によると「介護サービス事業所の指定を受けていない大阪府内のサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームにおいて、外部の在宅サービス利用にかかる受給者1人あたり単位数が非常に高くなっている」と論点として挙げられています。この論点に対しては実態調査を行ったうえで給付の適正化に向けた介護報酬上の対応を検討すべきという方向性が示されています。
我が国日本においては少子高齢化が深刻な社会問題となっており、年々減少する労働者人口に対して社会全体で支えなければならない高齢者の人口が増加しています。この高齢化は年々スピードが増しており、高齢者人口の増加に伴う住まいのニーズ拡大もサ高住普及の背景となっています。高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が増加することに対応する必要性があるのに対し、介護施設が不足していることから入居待ちも出ており、サ高住がその補完的な役割を果たすことが期待されています。
介護施設における入居者のニーズも多様化しており、介護だけでなく生活支援やコミュニティ形成などを求める声も多くなっています。そのため施設毎にレクリエーションやリハビリプログラムの充実に力を入れている事業所も増えており、医療に関するニーズを持つ入居者への対応と併せて体制を整備することが求められています。今後も高齢化社会は進みゆくことが想定されることから、「医療」と「生活の充実」という両輪で事業所運営が必要とされています。
高齢者住まい法は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」のことを意味しており、高齢者が安心して生活できる環境を整備することを目的としています。この法律ではサ高住の登録制度のほか、供給促進のための措置、終身建物賃貸借制度などについて定められています。
サ高住は高齢者が安心して暮らせる環境を提供しながら生活をサポートする役割を担っており、食事の提供や家事援助のほか、安否確認や生活相談などのサービス提供、緊急時の対応などを行います。地域包括ケアシステムにおける重要な構成要素でありながら、介護施設や特別養護老人ホームの不足を補う中間的な住まいとして位置付けられています。
「地域包括ケアシステム」とは、医療や介護が必要な状況となっても可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じた自立生活を続けられるよう、医療や介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保するという考え方を前提とした仕組みのことをいいます。少子高齢化が深刻な社会問題となる中、「できる限り高齢者本人も元気に生活しながら他の方たちを支える生活支援の担い手にもなってもらう」という方向性で取り組みが進められています。
「地域包括ケアシステム」は、住み慣れた地域で能力に応じた自立生活を続けることを目指す仕組みです。そのため、地域の課題に対応する役割として、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の機能強化が求められています。具体的には市町村などの地域が高齢者全般を対象に必要とされているサービスを提供するなどの取り組みが行われています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を建設する際には、補助金を利用できる場合があります。年度ごとに予算規模や内容が異なる可能性がありますが、令和6年度当初予算案の「スマートウェルネス住宅等推進事業」では、新築住宅の場合に補助率10分の1で補助金が支給されました。限度額は床面積に応じて、1戸あたり70万円~135万円です。
サ高住の運営においてもさまざまな補助金や助成金を利用することができます。具体的にはIT導入補助金や人材開発支援助成金などがありますが、これらはサ高住に限る補助金ではなくあらゆる業種・業界で利用することが可能なものとなっています。詳しくは各監督省庁や自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。
サ高住を運営するためには人材教育や育成が必要不可欠であり、外国人介護人材の活用はその対応に向けた一手になります。このサイトではサ高住に関するものだけではなくさまざまな情報を紹介・解説していますのでぜひチェックして下さい。