技能実習の希望者を募集して日本の監理団体に取次ぐ送り出し機関には、実習生の動向把握と保護、帰国後の就労支援といった役割もあります。送り出し機関の役割、送り出し機関を選ぶ際の注意点などをお伝えします。
送り出し機関(送出機関)とは、日本での就労や実習を希望する人を募集し、日本の受け入れ調整機関に取り次ぐ機関です。
送り出し機関の役割は、技能実習制度の場合、技能実習生の募集と選考、監理団体への取次、出国前の研修と健康診断、送り出し後のサポートと帰国後の就労支援などとなっています(取次を行わないものは「準備機関」と呼ばれて区別されます)。
EPAの送り出し機関も同じような役割を持っていますが、技能実習制度と大きく異なるのは、インドネシア、フィリピン、ベトナムの各国の送り出し機関がそれぞれひとつしかない点です。
技能実習生とEPA介護福祉士候補者を受け入れる場合は、送り出し機関を通すことが必須となります。特定技能1号の場合は原則不要ですが、送出国によっては送り出し機関が必要です。
受け入れ希望施設から監理団体を通じて技能実習生募集の依頼を受けると、送り出し機関は現地で技能実習希望者を募集。書類選考、面接などによって応募者をある程度まで絞り込みます。学歴や職歴、性格や適性を見極めて候補者を絞り込むのは、送り出し機関の大切な役割のひとつです。
候補者を絞り込んだら、受け入れ希望施設と候補者の面接をセッティング。受け入れ希望施設と監理団体の担当者が現地に足を運び、面接を行なえるように段取りをします(オンライン面接の場合あり)。
選考を終えた技能実習生に対して、日本語教育や介護の基礎的な教育を施すのも、送り出し機関の役割です。教育期間は数カ月に及び、実習生が日本の生活にスムーズに適応できるように、生活習慣、ルールやマナーなどについても教育が行われます。
研修と並行して、送り出し機関は在留資格の認定を受けるために必要な健康診断を行い、結果を監理団体に報告します。在留資格認定証明書が交付されたら、在外公館にビザを申請し、日本への出国準備を整えます。
送り出し機関による支援は、日本に入国してからも続きます。
実習中に監理団体は受け入れ先を定期的に訪問したり監査を行ったりしますが、送り出し機関も実習生の動向把握に努めることになっています。
実習生が不当な扱いを受けたり、なんらかのトラブルに巻き込まれたりした際の保護やフォローは、送り出し機関の重要な業務。また、母国の家族に対して、実習状況や実習生の様子などを報告するなど、家族と実習生をつなぐための支援も行います。
日本での技能実習を無事に終えて帰国した技能実習生に対し、送り出し機関は就職先のあっせんをはじめとした様々な支援を行います。
日本で納付した所得税の還付手続きや、厚生年金の脱退一時金の受取りなども、送り出し機関が行うサポート業務となっています。
また、厚生労働省や外国人技能実習機構は、技能実習生の帰国後の動向などに関するフォローアップ調査を行っています。こういった調査に協力することも、送り出し機関の義務です。
送り出し機関には、日本から外国への技術移転という技能実習制度の趣旨を理解して、適正に業務を行うよう、以下のような要件が定められています。
送り出し機関を選ぶ際には、現地政府の認定を受けているか、必ず確認しましょう。中には、技能実習生に多額の借金を背負わせる送り出し機関も存在します。送り出し機関とトラブルになっても、日本の法律は及びません。
法を守り、人道的にもクリーンな送り出し機関を選ぶことが、技能実習生受け入れを成功させる第一歩です。
悪質な送り出し機関には関わらない、また、悪質な送り出し機関と取次契約を結んでいる監理団体とも、関わりを持たないようにしましょう。
送り出し機関は、日本滞在中の実習生の動向を把握し、必要に応じて保護する役目を負っています。日本に駐在員を配置している送り出し機関なら、万一のトラブルの際も迅速に対応可能です。
出国前の実習生に日本語教育を行うのも、送り出し機関の役割です。スタッフの日本語能力が不確かな送り出し機関より、日本語能力が高く、日本の習慣などにも精通しているスタッフが在籍する組織の方が、実習生の習熟度も高くなることが期待できます。