自社に在籍したまま他社に出向し、他社で様々なスキルを学んで自社へと復帰する取り組みを支援する産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)。出向元にも出向先にもメリットがあり、なおかつ国から助成金を支給されるとなれば、多くの企業が注目しないわけにはいきません。当ページでは、産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の概要や申請条件、補助金額、補助・助成対象、申請の流れについてご紹介しています。
※産業雇用安定助成金には「スキルアップ支援コース」や「雇用維持支援コース」、「事業再構築支援コース」などがありましたが、「雇用維持支援コース」は令和5年10月31日をもって廃止されています。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは、自社の労働者のスキルアップを目的に他社へ在籍型出向(※)をさせた事業主に対し、出向中の対象労働者の給料の一部を国が助成する制度。対象労働者が自社へ復帰した後は、出向前に比べて5%以上の給料アップを行った場合に助成金の対象となります。
所定の金額に助成率を乗じた額が支給額で、1日1人あたり8,335円が上限額となります。
※在籍型出向とは
在籍型出向とは、自社に籍を置いたまま他社へ出向すること。転籍型の出向とは異なり、労働者は出向元・出向先の両方と雇用契約を結びます。ただし、企業グループ内での在籍型出向は、産業雇用安定助成金の対象とはなりません。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)を申請するためには、出向元・出向先・対象労働者の3者において、一定の要件を満たす必要があります。主な要件は次の通りです。
対象となった事業主には、「助成額」に対して「助成率」を乗じた金額が支給されます。助成額と助成率は次の通りです。
【助成額】
次の①②のうち率い額が助成額となります。
①出向労働者の出向中の賃金のうち出向元事業主が負担する額
②出向労働者の出向前の賃金の1/2の額
【助成率】
ただし、1人1日あたりの支給上限額は8,355円となります。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の助成金は、在籍型出向を行う事業主に支給されます。労働者個人に支給される助成金ではありません。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の申請の流れは次の通りです。
1. 出向計画を立てる
事業所ごとに職業能力開発推進者を選任し、在籍型出向に関する具体的な計画を立案。出向予定者本人の同意や労働条件の明示、労働組合との出向協定締結、出向先との間での出向契約締結なども必要です。
2. 労働局へ出向実施計画書等を提出する
出向日の前日までに、労働局またはハローワークへ出向実施計画書・スキルアップ計画書などの必要書類を提出します。
3. 対象労働者を出向させる
出向実施計画書に基づき、対象労働者を出向させます。出向期間は「1か月以上2年以内」で、かつ出向計画書に記載した「出向実施予定期間」の範囲内とします。
4. 自社に復帰した対象労働者の給与を5%以上アップさせる
出向を終えて自社へ復帰した対象労働者に対し、出向前の5%以上アップさせた給料を支払います。
なお「5%以上」の算定基準は、出向前6か月と復帰後6か月の給与比較となります(復帰前後の計1年間を賃金上昇確認期間と言います)。
5. 労働局に支給申請書等を提出する
労働局またはハローワークへ産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)支給申請書、および必要書類を提出します。提出期限は賃金上昇確認期間の最終支払日(復帰後6か月目の給料支払日)の翌日から2か月以内です。
従業員の出向を根拠に申請できる助成金制度は他にもありますが、同一の出向で複数の助成金を申請することはできないことにご注意ください。