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外国人介護士の受け入れの問題点

日本国内で深刻化している少子高齢化の影響により、介護現場での働き手不足も大きな課題となっています。その対策によって外国人介護士の受け入れに取り組む事業者が増えていますが、現場での様々な問題と施設側での受け入れ対応が必要になります。

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外国人介護士を受け入れた現場の声

実際に外国人介護士を受け入れるとなりますとさまざまな問題が発生します。問題点を解消するのにも大きなハードルがあります。中でも大きいのは言語の壁です。

「社会福祉法人 平成福祉会」中村さん

(質問)外国人介護士の受入れを行うにあたって、最も重視すべきことは何だと思いますか?

やっぱり日本語ですね。生活する上ではもちろん、日本で仕事を続ける上で必要な介護福祉士資格を取得するためにも欠かせないので。

(質問)介護福祉士の資格取得に向けては、どのように取り組んでいましたか?

まず、日本語の勉強は来日後すぐに始めてもらいました。最初の1年はとにかく日本語を身に着けることを重視。それから介護福祉士の教材を使ったり、オンライン授業をお願いしたりして業務時間外の学習を促していた形です。

「社会福祉法人 福祉楽団」上野さん

(質問)予想してなかったような課題は出たりしましたか?

うーん。あまり「外国人だから」「日本人だから」って線引きをすることはないんです。外国人の職員がミスをしたとしても、日本人の職員がやったとしても予想はできていないので一緒かなって思います。

あとは何かしら問題が起きたとき、そういう時には日本語だけだと難しいので、通訳を交えたりしながらやっていました。なので結局は日本語の問題だけだと思いますね。

(質問)日本語能力の向上については何か取り組みをされていらっしゃいますか?

日本語はやはり伝わらないことの方が多いので、「ZENKEN NIHONGO 介護」という日本語教育プログラムを2023年1月から導入しています。これは動画での受講生の学習の進捗状況を一目で把握できるので、とても助かっています。

「社会福祉法人 五霞愛隣会」小林さん

(質問)外国人の雇用にあたって、重視すべきことは何だと思いますか?

日本語の理解力ですね。日々のコミュニケーションにおいてももちろんですが、利用者の方が怪我や転倒、発熱したときなど、自分で対応する必要がある場面は多々あります。

ある意味命を預かっている仕事でもあるので、どこまで日本語が理解できるのかをやはり大切にしたいですね。

(質問)働き始めて間もない時は、どのように仕事をサポートしていたのでしょうか?

まずは、基本的な日本語と介護で使う言葉の勉強、介護技術の練習が中心でした。(中略)まだ日本語がそれほど理解できないうちは、夜勤や遅番のシフトは入れないようにして、必ず日本人が隣にいる状況を作るような体制にしていましたね。

いずれの施設の担当者も、外国人介護士の雇用に際しては「言葉の壁」を大きな課題ととらえ、何らかの具体的な対策を講じていることが分かります。

外国人介護人材の受け入れの現状

厚生労働省がまとめた資料では、令和3年度10月時点での外国人労働者の総数は1,727,221人、令和4年度の同時期では1,822,725人、令和5年度の同時期では2,048,675人とされています。日本における外国人労働者人口は、年々着実に増加している状況です。

これら外国人労働者のうち、介護業界が属する「医療・福祉」分野の占める割合は、令和5年度が4.4%。一見、少ない割合に見えますが、業界別では6位という位置づけとなります。

参照:・厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001195787.pdf

参照:・厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和4年10月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001044543.pdf

外国人介護士の受け入れにおける問題点

受け入れ費用

外国人介護士の受け入れにあたっては、あっせん・交渉を事業者自らが行うことは非常に難しくなっています。採用に関するサポートを提供している事業者や団体に対して依頼をかけることになりますが、委託費用や紹介費用などの料金が必要になります。委託費用は月額で支払うことが多く、紹介費用は想定年収の何%という形で費用が発生します。これらの費用は安ければよいというわけではなく、金額に応じた内容であるかどうかが非常に重要です。

手続きの煩雑さ

外国人介護士を受け入れるためにはさまざまな手続きを行う必要があります。在留資格によって受け入れ要件は異なりますし、それらすべてを正しく把握することは非常に困難です。さらに必要書類の準備や介護業務以外のサポートも行わなければならないのですが、これらは監理団体や登録支援機関のサポートを受けることで解決することができるでしょう。費用はかかるものの、制度を正しく理解した専門家に支援してもらえますので、受け入れがスムーズになります。

言語の壁

介護施設のみならず、外国人労働者の受け入れに際しては日本語での読み書きやコミュニケーションに不安を感じる方は多いでしょう。日常会話におけるコミュニケーションはもちろん、介護記録へのふりがな・内容理解のためのサポートなど適宜フォローすることができる体制を整えなければならないためです。労働者側・受け入れる側の双方がコミュニケーション円滑化のために努力しなければいけません。

定着率の悪さ

外国人労働者の受け入れに関しては制度によって滞在期間や就労期間に定めが異なっているため、「定着率」も大きな課題とされています。定着率が低いと定期的に採用コストをかけなければなりませんので、その分損益にマイナスの影響を与えてしまいます。EPA介護福祉士候補生の場合、5年目に実施される国家試験に受からなければ強制送還されるおそれもあります。ほかにも環境変化によるストレスに耐えられず離職してしまうこともあります。

文化の違いによる心理的な負担

外国人労働者と日本人の違いは見た目や言葉だけではありません。外国人特有の文化や宗教の違いなど、文化的な違いによりコミュニケーションに支障が出る可能性もあるでしょう。国内の当たり前と外国人労働者の当たり前が大きく違うことにより、心理的な負担が大きくなってしまう可能性も少なくありません。そのため受け入れる側にある程度の理解が欠かせなません。

利用者の「外国人」への抵抗感

外国人介護士の受け入れにおいてストレスや抵抗感を感じるのは働く本人と職場で共に働く介護士だけではありません。実際に施設内でサービスを受ける利用者にも大きな影響があります。さらに利用者には「利用者本人」に加えて「利用者のご家族」までを含みますので、その関係者の中において偏見などがある場合には受け入れられづらくなってしまう可能性があります。受け入れを行うにあたっては事前研修などにより、幅広く理解を求める必要があるでしょう。

在留期間のルール

外国人介護士が職場で働くにあたっては、きちんとルールを守らなければいけません。特にビザについては注意が必要であり、中でも訪問介護は在留資格「介護」が無ければいけません。EPA介護福祉士候補者や技能実習、特定技能の在留資格では訪問介護に従事することができませんので、注意が必要です。こういった制度上の気を付けなければいけない点は、監理団体や登録支援機関に適宜確認を行いながら、どの在留資格で外国人介護人材を採用するか決定していきましょう。

外国人介護士の受け入れを成功させるポイント

施設の受け入れ態勢

介護業務やマニュアルの見直し

介護職はシフト制であることが一般的ですので、常に同じ人が教えられるわけではありません。そのためある程度誰がついて教えても同じ内容になるよう、業務そのものの内容やマニュアルの整備などを見直しておく必要があります。

在留資格や学習期間による違いを理解する

どのような在留資格を持っているか、学習期間がどのくらいかによって日本に対する理解や日本語力は大きく変わります。そのため実際に働きにくる労働者がどの水準のレベルであるかはその違いを理解するように努めましょう。

対応できる業務内容について理解する

どの程度の能力・言語水準であればどのような業務ができるのかをきちんと理解・整理しておく必要があります。本人の能力によるものもそうですが、ビザなどの影響によりできる業務・できない業務があることも理解・周知しておきましょう。

職員への理解促進と教育

外国人職員の受け入れに関しての意図を理解する

なぜ外国人介護士を受け入れるのか?という背景について、事業所内できちんと共有しておく必要があります。既存の職員からしますと負担が増えるだけになってしまいますので、その意図を理解させたうえで協力してもらう必要があります。

文化の違いを理解してコミュニケーションをとる

日本人と外国人では、生まれ育った環境が大きく異なります。この文化の違いは短期的に埋まるものではありませんので、それぞれがきちんと理解をして尊重しあえるようコミュニケーションを取る必要があります。

業務範囲に対する認識をそろえる

業務範囲に関しては明確な認識を持たせておかなければ、「あの人だけあの業務をしなくてずるい」というような不平不満につながりかねません。現場の中において誰が何をするのかをきちんと分担しておきましょう。

外国人材への教育

日本の職場のルールを覚えてもらう

受け入れる側が理解する必要のあることも多くありますが、働きにくる労働者側も職場のルールを覚える努力が必要です。特に職場内で守らなければいけないルールがある場合、きちんと守ってもらえるように伝えておきましょう。

言語学習は常に行う

言語に関する学習は常に行うようにしましょう。介護の現場では特にコミュニケーションが大切ですので、従業員・利用者との間できちんとコミュニケーションが取れるよう常に勉強できる環境にしておきましょう。

外国人介護士を受け入れる際の注意点

言葉を十分に理解できない異国の地で、コミュニケーション能力が重視される仕事に就く外国人介護士たちは、日々大きなプレッシャーやストレスと戦っています。このプレッシャーやストレスの中で、介護技術だけではなく、日本語や机上学習も並行しなければなりません。まずは、日本人スタッフ全員が彼ら、彼女らの置かれている状況をよく理解する必要があります。

施設側においては、来日初期段階の外国人介護士とのコミュニケーション方法、日本語の教育環境、外国人介護士にも理解できる業務マニュアルの作成、外国人介護士の受け入れに関する日本人スタッフへの理解の促進などを中心に、少しでも外国人介護士たちにとって居心地の良い職場環境を構築するよう努めましょう。

【まとめ】言葉の壁を克服すれば道は大きく開ける

外国人介護士を受け入れる際の問題点は多々想定されますが、最大の問題点は、やはり言葉の壁です。ご紹介した施設担当者の声も踏まえてやや極論すれば、言葉の壁さえ克服できれば多くの問題は解決する、と言えるかもしれません。施設側においては、いかにして外国人介護士へ効率的に日本語を習得させるかを考えるべきでしょう。

当サイトでは、外国人介護士の受け入れや教育に関する多くのノウハウをご紹介しています。外国人介護士の採用を検討している事業主の方のお役に立てれば幸いです。

受け入れのためにしっかり準備しよう

少子高齢化はこれからもさらに進んでいきますので、今以上に介護現場の人手不足は厳しいものになるでしょう。外国人介護人材を受け入れるという選択肢がスタンダードになっていくことが想定されますが、そのためにはさまざまな準備が必要であり、円滑に受け入れるためには基礎知識も学んでおく必要があります。このサイトでは外国人介護人材の受け入れに必要な情報もたくさん発信していますので、ぜひチェックして参考にしてください。

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