介護業界は、少子高齢化に伴い需要が増える一方、人手不足が深刻化しています。対応・対策として外国人労働者が活躍できる場面が増えており、在留資格介護・EPA介護福祉士は訪問介護が可能となります。また、特定技能介護も訪問介護が可能になるよう、政府は2025年度の実施を目指しています。
外国人介護人材には全部で4つの資格があり、その資格によって対応できる業務内容が異なります。ここでは訪問介護ができる資格として2点紹介します。
在留資格「介護」の取得者は日本の介護福祉士養成校を卒業し、原則として介護福祉士の資格を持っている労働者です。介護福祉士の資格を持っているのは4つある資格のうち「介護」のみであり、養成校への入学時に高い日本語能力を求められますので、日本語でのコミュニケーションが取れる能力の高さも持ち合わせています。養成学校に在学している時から介護関連施設でアルバイトをするような方が多いため即戦力になりやすく、ほかの在留資格と違い、訪問系サービスへの対応が可能です。さらに働く期間の制限もありませんので、長期に亘って働いてもらうことが可能となっています。
二国間における経済連携強化のために作られた資格です。インドネシアやフィリピン・ベトナムの外国人が日本の介護福祉士取得を目標とする場合、介護施設などで働くことができるようになります。要件としては看護系学校を卒業しているか、母国で介護士の資格を持っている外国人が該当し、日本語能力要件は国によって違います。たとえばベトナムであれば日本語3級(N3)相当、フィリピン・インドネシアはN5が求められます。働くことができる期間については、介護福祉士試験に受かったら永続的になりますが、4年以内に介護福祉士試験に受からなかった場合には帰国する必要があります。在留資格「介護」の次に基礎知識・日本語能力が高いとされています。
出典:○EPA介護福祉士が訪問系サービスを提供するに当たって受入れ機関等が留意すべき事項について│厚生労働省
現在は先に紹介した2つの資格のみで訪問系サービスへの対応が可能となっていますが、政府方針として、2025年には特定技能「介護」の介護士であっても訪問介護ができるようになることを目指しています。訪問介護における人手不足は深刻度を増しており、需要が年々増えていることからこういった制度改革に取り組んでいる状況です。
人手不足に対応するために外国人労働者の活用が期待されてはいますが、現場では必ずしもポジティブな印象ではないようです。NHKの取材によると介護事業所の約6割が「訪問系サービスの技能実習生の受け入れが難しい」と回答しています。
引用元:訪問介護ヘルパーできる外国人材 対象拡大へ│NHK(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240619/k10014485751000.html)
多くの訪問介護では、1人の利用者に対して1人の介護士が訪問する形で行われます。日本語の堪能な外国人介護士なら問題ありませんが、日本語でのコミュニケーションに不安のある外国人介護士には、職務上の各種リスクが懸念されます。
一般に訪問介護は、介護士が1人で車を運転して利用者宅を訪問する形となりますが、介護に従事する在留外国人の中には、日本で運転できる自動車免許を取得していない人が少なくありません。そのため、仮に外国人介護士の訪問介護が解禁されたとしても、車を運転できる日本人を同行させたり自動車教習所へ通わせたりする必要が生じ、事業所の費用負担が増加する可能性もあります。
※参照:公益財団法人介護労働安定センター|令和3年度 介護労働の現状について
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_cw_genjou.pdf
統計データによると「介護員が不足している」と回答した訪問介護事業所は全体の約80.6%にも上っており、これは業界全体の約63%にあたります。また、令和6年時点で特定技能介護は36,719人となっており、これらの労働力をどう活用していくかも大きな課題となっています。現在限られた資格でしか従事することのできない訪問介護において「特定技能」が追加されることは業界的にも期待されているため、そのための受け入れ準備を進めて行くことも非常に重要です。
出典:公益財団法人介護労働安定センター|令和3年度 介護労働の現状について
少子高齢化は日本において最大の課題といっても過言ではありません。介護需要は増加する一方で労働者不足が深刻になっていますので、外国人介護人材の受け入れや戦力化についてもきちんと知っておきましょう。