最低賃金法は賃金の最低限度額を定めた法律であり、企業は最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。この法律は国籍問わず日本で働く人に適用されるので、外国人労働者も対象です。ここでは、外国人介護人材の歌謡を検討している経営者が押さえておくべき要素をまとめました。
参照元:最低賃金法│e-gov(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000137_20220617_504AC0000000068)
最低賃金法とは、国が定めた最低限度以上の賃金を支払わなければならない制度です。労働基準法第24条第1項では賃金の全額支払いが、最低賃金法第4条第1項では最低賃金額以上の賃金の支払いが明文化されています。第2項では、両者の同意があったとしても最低賃金に満たない場合は無効となることも定められています。
最低賃金には地域別最低賃金および特定最低賃金の2種類があります。両方が同時に適用される場合、高い方を採用しなければなりません。
地域別最低賃金は、各都道府県で働く労働者、使用者に適用される最低賃金です。各都道府県ごとに定められていて、2025年の地域最低賃金は沖縄県の952円~東京都の1,163円となっています。(2025年8月8日時点)
地域で最低賃金が異なるのは、地域で物価、生活費、賃金水準、企業の賃金支払い能力などが違うためです。会社の住所と労働現場が異なる場合の最低賃金は、原則として労働者が実際に働く場所の最低賃金が適用されます。
参照元:地域別最低賃金全国一覧│厚労省(https://saiteichingin.mhlw.go.jp/table/page_list_nationallist.php)
特定最低賃金は、特定の産業で働く人に対して設定される最低賃金です。特定の産業の労働条件を改善して生活の安定を図ることや、深刻な人手不足を抱える産業に対して労働者を確保することを目的として設定されています。
現在介護業界については特定の産業に含まれていませんが、介護職員の平均給与額が前年(令和6年度)比で4.3%増となっている一方で他産業の賃上げにより介護人材が取り合いになっていることもあって更なる処遇改善が求められています。介護分野の処遇改善は課題となっており、今後介護業界についても特定最低賃金への導入が検討されています。
参照元:福岡大臣会見概要│厚労省(https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00791.html)
賃金額を時間当たりの金額に換算した際、地域・特定最低賃金として設定されている最低賃金を満たしているかを判断します。満たしていない場合、最低賃金法違反となります。
最低賃金法を守ることで、労働者に安心感を与えるとともに、地域経済の発展にも寄与します。労働者は同時に消費者でもあります。定められた最低賃金以上の賃金を得ることで生計を立てるため、最低賃金が高ければ高いほど地域経済が活性化し、結果的に企業の利益にもつながるのです。
最低賃金法を守らなかった場合、社会的信頼を損ねるだけでなく、人材確保も困難になるでしょう。特に近年は人材不足が深刻化しています。労働者が職を探す際には賃金は重要な判断材料の一つであり、低賃金では他社に後れを取ることになります。
雇用契約時に最低賃金を明記することが求められています。また、労働内容に関する説明責任もあり、その中で賃金についても説明する必要があります。最低賃金を理解していない労働者に対し、最低賃金以下の賃金で雇用契約を結ぶことは違反であり、最低賃金および自社の賃金を明確に伝えることが求められています。
最低賃金法第40条では、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった雇用者には、50万円以下の罰金が科されることが明記されています。実際に最低賃金法違反で書類送検された事例も多々あります。企業は、労働者に対して適切な賃金を支払うことが求められます。違反を避けるためには、内部監査や研修など適切な対策の実施が重要です。必要に応じて、第三者機関に相談することも検討しましょう。
参照元:労働基準監督署対策相談室「書類送検された事例」(【PDF】https://www.roukitaisaku.com/zesei/souken.html)
最低賃金法は、国籍問わず日本で働くすべての労働者に適用されるものです。外国人であるからと言って日本人よりも低い賃金で働かせると違法となるので注意が必要です。人件費を抑えたい気持ちがあるかもしれませんが、労働者の権利を守り企業の信頼性を高めるために、経営者や日本人マネージャーは最低賃金法に関する正しい知識を持つことが大切です。今後、介護業界が特定最低賃金の対象になる可能性もあります。動向を注視しておきましょう。