技能実習制度は国際貢献のために開発途上国などの外国人を最長5年間にわたって受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度として運用されています。外国人労働者が日本の介護現場で働くための在留資格の一つとなっています。
技能実習制度は国際貢献などのために平成5年度から創設された制度であり、開発途上国などの外国人を最長5年間という一定期間に限り受け入れることでOJTを通して技能を移転する制度となっています。受け入れ機関には「企業単独型」「団体監理型」の2通りがあり、「企業単独型」は日本企業が現地法人や合弁企業・取引先の職員などを受け入れて実施します。「団体監理型」は非営利の監理団体が実習生を受け入れて傘下の企業などで技能実習を実施します。
参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000182392.pdf
技能実習生の在留資格には1号から3号という3つの段階があり、試験に合格することで資格が移行でき、在留期間が更新される仕組みになっています。それぞれの在留期間と資格移行の条件は、以下のとおりです。
※試験が不合格だった場合は、1回に限り再受験が認められています。
※技能実習3号に進めるのは、受け入れ調整機関が優良認定を受けた一般監理団体である場合に限られます。
日本における外国人介護職員の在留資格は、4種類。技能実習1号〜3号のほか、特定技能1号、EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者、そして「介護」の在留資格です。
このなかで、技能実習がほかと大きく異なる点は、制度の目的が「日本から相手国への技術移転」であるということ。途上国の経済発展を支援するための国際協力という点が、ほかの制度とは異なります。
技能実習生が日本に来るためには「日本語能力要件」と「同等業務従事経験」の2つがあります。「日本語能力要件」は1年目の場合に「日本語能力試験のN4に合格している者」、2年目の場合に「日本語能力試験のN3に合格している者」などと定められています。「同等業務従事経験」はいわゆる職歴要件に該当し、「日本において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験があること」もしくは「団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること」を満たす必要があります。介護分野においては外国政府による介護士認定等を受けた者、外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者も対象となります。
出典:https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/care.html
日本語能力の目安となる日本語能力試験には、N5の「基本的な日本語をある程度理解することができる」から、N1の「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」まで5つのレベルがあります。
入国に必要とされるのは、N4認定相当の「基本的な日本語が理解できる」レベル。実習生の送出し機関が、現地で講習と日本語能力試験を実施しており、このレベルに達した実習生だけが入国できます。
また1年後には、N3相当の「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」能力が必要になります。
技能実習生の受け入れ数は、コロナ禍による停滞を除けば大幅に増加しています。なかでも、2017年に追加された介護分野の受け入れ数は、特に大きく伸びている分野といえるでしょう。
介護分野における技能実習計画の新規認定件数は、2018年度に1,823件だったものが、2019年度8,967件、2020年度には12,068件と、2年間で6倍以上に増加しました。
受け入れの動機としては、「介護職員不足を補うため」を挙げた介護施設がもっとも多く、全体の75.1%を占めています。
技能実習生を受け入れるために必要な施設側の要件について紹介します。技能実習制度としての要件には「要件を満たす技能実習責任者を選定していること」「5年以上の経験をもつ指導員を1名以上選任していること」「生活指導員を1名以上選任していること」「受け入れ人数の上限を超えないこと」などがあります。そして介護職種に関しては「技能学習指導員のうち1名以上は介護福祉士の資格を持っていること」「技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること」「開設後3年以上経過していること」「夜勤などの業務を行わせる場合には利用者の安全確保に必要な措置を講ずること」などが挙げられています。
出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000182392.pdf
技能実習生の受け入れに関する流れはまずはじめに介護施設などの実習実施者のもとで最大5年間の実習を実施し、実習の各段階において技能評価試験を受検することになります。入国して1年後にまず1回目の受検、3年後に2回目の受検、5年後に3回目の受検をすることになります。そのあとは本国に帰国し、本国で技能などを活用することになります。なお、5年の期間が満了するまでの間に特定技能への移行や介護福祉士国家試験に合格することで在留資格「介護」への移行などを行うことができます。
技能実習生を受け入れるにあたっては、技能実習計画の認定申請を行う必要があります。また、計画の提出に際しては名簿や実習実施予定表、誓約書、雇用契約書の写しなどの提出書類も併せて用意する必要があります。この計画の内容について変更を行う場合、技能実習計画の変更手続きも行わなければいけません。また、技能実習計画の認定をはじめて受けた時には、実習開始後に遅滞なく実習実施者届出書を提出する必要があります。受理されたら実習実施者届出受理書が交付されますので、大切に保管しておくようにしましょう。また、何らかの事情で技能実習が継続できなくなった場合、技能実習実施困難時の届け出を行う必要があります。
資格の移行と在留期間の更新には試験に合格することが条件になりますが、外国人技能実習生には最長で5年の在留が認められています。実習生を受け入れることで、一定期間人材不足を補えることは、大きなメリットとなるでしょう。
また、実習生の選考条件には、介護職に従事した経験などが含まれています。一定の介護の経験を持つ人材を実習生として受け入れられるため、即戦力になることが期待できます。
異なる文化背景を持つ人材が職員として加わることで、日本人介護職員や利用者は、他国の風習や文化に触れて、理解を深めることができます。異文化交流によって知的好奇心が刺激される、活力が生まれるなどの効果も期待できるでしょう。
また、外国人技能実習制度は、実習を通して技術移転を図り、他国の経済発展に協力することを目的としています。実習生を受け入れることが草の根の交流となり、国際貢献につながることも、メリットとして見逃せません。
技能実習生の入国条件のひとつとなっている日本語能力は、N4相当。「基本的な日本語が理解できる」であり、利用者の体調を把握したり、訴えを聞き取ったりするには不充分であることも考えられます。
言葉の壁、文化の違いがあると、日本人同士の場合と比べてより丁寧なコミュニケーションが必要となり、忙しい現場では説明がわずらわしく感じられる局面も出てくるでしょう。
人手不足が顕著な介護業界においては外国人労働者をどう活用するかが重要になっています。このページで紹介しました技能実習制度のほか、特定技能やEPA、在留資格「介護」などさまざまな外国人材受け入れ制度が設けられています。このサイトではこれらの情報に関して豊富なコンテンツを発信していますので、ぜひチェックして参考にしてください。制度をよく知ってうまく活用することで、効率的・効果的な採用計画を作成していきましょう。