新型コロナウイルス感染拡大の折、多くの事業主が利用したことで注目された雇用調整助成金。業績悪化時における雇用主の人件費負担を軽減させ、雇用維持を図る目的で敷かれている助成金制度です。当ページでは、雇用調整助成金の概要や申請条件、補助金額、補助・助成対象、申請の流れについてご紹介しています。
雇用調整助成金とは、業績悪化中の人件費問題等を理由に従業員を解雇・休業せざるを得なくなった際、その人件費の一部を助成する制度です。雇用主の負担を少しでも軽くし、従業員の雇用を維持させることを目的としています。
助成対象は、直近3か月の売上高等の指標等が前年同時期に比べて10%以上減少している事業者など。中小企業だけではなく大企業も助成の対象となります。また、会社だけではなく個人事業主も助成の対象です。
なお、雇用調整助成金は以前から存在した制度でしたが、とりわけ新型コロナウイルス感染拡大の影響による景気低迷時には、日本経済を底支えした頼もしい制度の1つでした。
雇用調整助成金の主な申請条件は次の3点です。
1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
2. 直近3か月の売上高等の指標等が前年同時期に比べて10%以上減少していること
3. 雇用保険被保険者数、および受け入れている派遣労働者数の雇用人数における直近3ヵ月間の月平均値について、前年同時期に比べて中小企業の場合は10%超かつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超かつ6人以上増加していないこと
4. 雇用主と従業員との協定により実施する雇用調整(休業・教育訓練・出向)が、一定の要件を満たしていること、など
ほかにも申請条件があるので、実際に申請する際には行政の窓口等で確認しましょう。
雇用調整助成金の助成金額は、雇用調整の調整方法(休業、教育訓練、出向)により異なります。以下、休業と教育訓練における助成金額について見てみましょう。
事業主が支払った休業手当負担額に加え、負担額に対して次の助成率を乗じた額が助成されます。
ただし、対象労働者の1日の上限助成額は8,265円とされていることにご注意ください。
休業中に教育訓練を実施した場合には、上記の助成金に1日1人あたり1,200円が加算されます。
雇用計画(休業・教育訓練・出向)を策定し、雇用主と従業員との間で労使協定を結びます。
雇用計画の内容を具体的に計画届としてまとめ、管轄の労働局へ提出します。
提出した計画書に基づき、雇用調整を実施します。
雇用調整助成金の支給申請書を作成し、管轄の労働局へ提出します。
労働局が支給申請書を審査します。
支給申請書の内容が適正と判断されれば助成金が支給されます。
なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響下においては、助成金の支給が事業の命綱になりうる状況だったため、特例として「1.雇用調整計画の策定」と「2.雇用調整計画届の作成と提出」が省略され、「3.雇用調整の実施」からスタートすることが認められていました。また、平常時には支給申請から実際の支給までに長期間を要するところ1~1か月半で支給されるなど、迅速な対応がとられました。
作成した書類は、各都道府県の労働局へ持参して提出します。また、持参のほかにも、郵送やオンラインでの提出も可能です。
新型コロナウイルス感染拡大時には、可能な限り対面行動を控えるよう推奨されていたため、郵送やオンラインによる提出が多く見られました。
なお、雇用調整助成金のオンライン申請は、厚生労働省の「雇用関係助成金ポータル」から行います。
雇用関係助成金ポータルhttps://www.esop.mhlw.go.jp/
新型コロナウイルス感染拡大は非常事態だったため、雇用調整助成金の支給申請から1~1か月半というスピードで実際の支給が行われました。
今後も国難に近い緊急事態の際には迅速な支給がなされると思われますが、平時では申請から支給まで数か月を要します。申請から支給を待っている間に事業がストップする事態とならないよう、雇用調整助成金の必要性を感じたならば速やかに行動するよう心がけましょう。
なお、これまでに雇用調整助成金に「特例」が付いた事例は、新型コロナウイルス感染拡大のほかにも、次のようなものがあります。
これらと同レベルの事態とならなければ、「特例」は付かないと考えておくべきでしょう。